健康志向の高まりで生まれた第一次雑穀ブーム
はくばくが、雑穀を使った商品開発に取り組みはじめたのは1995年ごろ。商品の開発自体は大手チェーンストアの要望によるものだったが、社内では雑穀を扱うことに対してネガティブな意見も多かったという。
「1941年の創業以来、はくばくの主力は大麦製品でした。当時の雑穀に対するイメージというのはあまり良いものではなく、“大麦があるのになぜわざわざ雑穀をやるんだ”という根強い意見もあったのです。また、雑穀を少量パッキングするような設備も整っておらず、新商品を開発してもパッキングだけは、外部に委託してやってもらわなければならないほどでした」
その時、はくばくが販売したのは5種類の雑穀を混ぜた『穀物専科』。これが白米と一緒に他の穀物を少量ずつ混ぜて炊く『ミックス雑穀』商品の原型となっている。
この商品開発と前後して、厚生省(現厚生労働省)が従来の「成人病」を「生活習慣病」と改称し、食生活や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直すことで病気を予防しようという提言を行った。メタボリックシンドロームという言葉が浸透するなど、世の中が健康を意識しはじめるようになり、「身体に良い」とされるさまざまな食品がメディアに取り上げられてブームを起こしていた。そのひとつだった雑穀も例外ではない。これまで細々としたものだった『穀物専科』の売れ行きはあがり、雑穀の市場自体も爆発的な成長を遂げた。これまで30億円あまりだった市場規模が、ほんの2年間で100億円へ届く勢いとなる。
しかしこの勢いは3年しか続かなかった。2005年ごろから市場全体が頭打ちとなり、それどころか少しずつ下がっていく気配すらあった。