さまざまな健康法が定着しないように、エビデンス(科学的根拠)に基づかないものは一過性におわってしまう。雑穀も『健康に良さそう』という漠然としたイメージしかなく、ブームとして長続きしなかったのだ。
健康からおいしさにスイッチ。ターゲットは女性
その頃にはくばくが行った『雑穀ごはんに関するアンケート調査』では、雑穀へのイメージとして“健康に良い”と同じくらいのスコアで“おいしい”という結果が出た。
「雑穀を体にいいから食べるのではなく、おいしいと思って食べてくださる人がいる。その方たちが毎日食べ続けていただけるように、本当においしい雑穀を届けようと、さらなる新商品の開発がはじまりました」
とはいえ、おいしさの感じ方は人それぞれで異なる。はくばくでは、美しさや見た目、もちもち、ぷちぷちといった食感、香ばしさなど、五感で味わう雑穀らしさにおいしさを定めた。究極においしい雑穀ごはんを作りだすため、混ぜる雑穀の種類や配合の試作を重ねた。答えを出すまでに行った試食は、500回に及んだという。こうして完成した商品が、2006年発売の『おいしさ味わう十六穀ごはん』(以下十六穀ごはん)である。
雑穀市場を盛り上げれば、自分たちにもプラスになる
十六穀ごはんは、ターゲットを女性に絞っている。女性誌などのメディアを積極的に活用し、雑穀って新しい、おしゃれ、おいしいというイメージへとスイッチさせていく戦略をとった。プレス向けの発表の場も、あえて都内の超有名フレンチ・レストランを選んだという。
「『はくばくが新商品の発表会をやります』というより、『ミシュランの三ツ星を取り続けているフレンチ・レストランが雑穀を使ったランチを出します』といったほうがターゲットの注目を集められると考えました」
1社1人に限っても会場は大入り満員となった。フレンチでも雑穀が使えるという切り口は、それまでの健康に気をつかって選ぶものという意識を覆した。はくばくの仕掛けはそれだけにとどまらない。