土産物用に開発。これは売れる…はずが
明治時代に広島県で創業したアサムラサキ。日本が高度経済成長の中にあった1971年には、当時はまだ珍しかった麺つゆをいち早く製造販売している。かき醤油の発売開始は1992年。地元広島では、2年後に42の国と地域が参加するアジア競技大会開催を、4年後には第51回国民体育大会開催を控えていた。“お土産用に、広島をアピールできる、これまでにない商品を作ろう”それがかき醤油誕生のきっかけだった。
“広島産かきを入れただし醤油”というコンセプトはすんなりと決まった。広島は当時も現在も養殖かきの生産量は日本一だ。かつお節、昆布、乾しいたけからとった“だし”と、醤油に砂糖やみりんを加えて作る“かえし”をあわせて濃厚つゆを作る製法は、麺つゆの製造でノウハウがある。とはいえ、これにかきを加えればかき醤油、と、簡単にはいかなかった。
「かきは味もにおいもクセがあります。だいぶ試行錯誤しました。苦味やえぐみの少ない品種を選んだり、どの工程でいれるか考えたり。ナマで醤油に入れるわけにはいかないので、どのような形で加えるかも苦労しました」
商品開発から1年。試作を繰り返した結果、かきエキスを加える製法で商品化に漕ぎつける。アジア大会にも間に合った。ところが、これがまったく売れない。