常温保存を可能にして、お土産としての価値を高める
「そもそも、たらこを唐辛子入りの調味液に入れてつくる“明太子”は、株式会社ふくやが最初に生み出した食材です」
ふくやは明太子が広く愛されるようにと、商品開発後、製造方法などを公開した。その結果、明太子の市場は1200~1300億円程度にまで拡大し、博多を代表する食材として日常食からお中元やお歳暮など年次の行事に合せて贈る商品としても定着している。
「ふくやの明太子は、“博多ならではのお土産”ということで長年愛されてきました。しかし明太子は生ものなので、冷蔵保存で賞味期限は15日間しかなく、お土産として欠かせない要素の“常温保存商品”をなんとかして作りたいという想いが、商品開発のきっかけでした」
そこで誕生したのが、ツナ缶初の明太子味『めんツナかんかん』だ。使用するツナは口当たりの柔らかい国産ビンナガマグロで、たらこを漬ける調味液にしっかりと混ぜ合わせる。缶詰にしたことで常温保存が可能となり、賞味期限は3年と大幅に伸びた。
「明太子の調味液で味付けをした商品の販売は、今回が初めてではありません。過去にも、鮭のカマの部分を調味液に浸した商品を出しましたが、それも冷蔵品だったので、日持ちがせずお土産には向きませんでした。ただ、脂が乗った食品と明太子の辛みという組み合わせ自体は、相性がいいんです。ですから脂漬けのツナ缶であればきっと合うだろうな、という予感はありました」
そこで、マグロの水揚げ量の多い静岡県の中でも、特にツナ缶に強い工場やメーカーをピックアップし、複数の候補の中から、特にものづくりにこだわっていた缶詰工場、株式会社由比缶詰所に協力を依頼することになった。試作品の開発は順調で、由比缶詰所も老舗ならではの技術を持っていたため、開発開始からわずか数か月で、中身は狙い通りの商品に仕上がった。