55周年の大阪王将が取り組む新たなチェーン理論と人材育成、IT活用

飲食・宿泊2024.01.23

55周年の大阪王将が取り組む新たなチェーン理論と人材育成、IT活用

2024.01.23

55周年の大阪王将が取り組む新たなチェーン理論と人材育成、IT活用

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2024年に創業55周年を迎える「株式会社大阪王将」。主力ブランド「大阪王将」は全国に341店舗を展開する他、ラーメンやベーカリー・カフェ業態、海外店舗を含め455店となる(2023年11月末現在)。

業績も堅調で、2024年第3四半期累計の実績は外食事業全般で前年同期比110.6%、経常利益512.7%となった。代表取締役社長 植月剛氏はその要因をチェーン展開の再考、IT導入による省力化と価値創造、職人育成と語る。

目次

業績堅調の要因は、ライフスタイルの変化に応じた原点回帰

【Q】大阪王将ブランドは外食事業の他、冷凍餃子など食品事業も展開されていますね。

株式会社大阪王将 代表取締役社長 植月 剛 氏
株式会社大阪王将
代表取締役社長 植月 剛 氏

代表取締役社長 植月剛氏(以下同) 株式会社大阪王将は「イートアンドホールディングス」の子会社という立ち位置です。イートアンドホールディングスは事業会社制を採っていて、外食事業、冷凍食品事業、EC・通販事業、海外に展開する事業会社などをグループに置いています。

私はイートアンドホールディングスの常務をしながら、外食事業を担う子会社「株式会社大阪王将」の代表を務めています。展開しているブランドは餃子専門の「大阪王将」をはじめ、ラーメン業態の「太陽のトマト麺」、横浜タンメン「横濱一品香」、京都ラーメン「よってこや」、ベーカリー・カフェ業態「アールベイカー」などがあります。ブランドを活性化し、新しいモデルを作って外食店舗を増やしていく。それが私の一番のミッションだと考えています。

大阪王将に新卒入社して一筋約30年やってきましたが、時代の変化を見てきました。特に社会のライフスタイルが変わったことで、かつては長時間働いて稼ぐことで生活を豊かにする考え方が当たり前でしたが、いまはいかに短時間で効率よく成果を上げて、残りの時間をプライベートに割くという考え方になり、それに従って働き方も変わりました。

【Q】今期の業績がコロナ前に迫る勢いです。要因は何だったのでしょう。

大阪王将は2019年に50周年を迎えました。ちょうどコロナ禍に入る直前でしたが、そのタイミングでこれからのチェーンのあり方を再考したのです。

これまでのように同じものを増やしていっても、やがて必要とされなくなるのではないか。ならばそれぞれに個性のある店作りはどうかと考えました。減りつつある町中華のように地域に密着した、半径500mのお客様に可愛がっていただけるようなお店を目指していこう、もともと小さなお店から始まったブランドなのだから原点回帰しようと。そういう方向に舵を切ったのです。

それで当期の業績に好影響が出たということでしょう。もともと大阪王将ブランドはテイクアウトも強い業態でしたが、コロナ期間中はイートインよりテイクアウトが増えて売上構成比が変わっただけで、売上自体は維持することができました。

価値の見直しと、その再分配

【Q】出店戦略にも変更があったと伺いました。

コロナ期間中はリモートワークが増えて出勤が減り家族で過ごす時間が増えたことで、出店地を出勤駅から帰着駅にシフトしました。

これまでのオフィス立地なら20~30席、最低でも25坪が必要でしたが、生活立地に変更することで席数も必要なくなり、小型店の出店を増やしました。今後も生活立地へ新規出店を進めていきますが、オフィス立地にも再出店します。

【Q】2023年1月、埼玉県にセントラルキッチンを立ち上げられました。

大阪王将の仕込みは、昔から大部分を店舗で担っています。朝、工場から餃子の具と皮が店舗に届き、スタッフが手で包んでいます。餃子以外にも仕込みに手間のかかるものが多く、スタッフは仕込み作業に追われていました。

大阪王将 焼餃子そこで仕込み作業を少しでもCKに移管することで、お客様との接点を厚くしていこうと考えたのです。「気合と根性で接客しろ」ではなく、物理的に作業の中抜きをすることでサービスの質の向上を図りました。現在のCKが軌道に乗れば、他のエリアに第2第3のCKを考えます。

【Q】店舗ではタッチパネルなどのIT化が進められています。

独自の調査では、オーダーのセルフ化についてお客様は不快を感じられるどころか、むしろ「餃子を追加したくでも店員に直接言うのは恥ずかしいので便利」といったお声もありました。ITの活用で新たな価値が生まれたと思います。

大阪王将 調理ロボットまた、スタッフの業務でも省力化は重要です。23年10月から西五反田店で調理ロボットをテスト稼働させています。大阪王将の職人の技を完全コピーさせて、炒め物メニュー約20種類が調理可能です。これも軌道にのれば、全店に導入していく予定です。

【Q】バックヤードでの効率化はいかがでしょうか。

ITツールの導入で、最も簡略化、省人化が図れるのがバックヤードでの業務だと考えています。発注の簡素化や自動化、レシピ類、マニュアル類への簡単なアクセスを目指して、導入を進めています。

さらにレジや在庫管理とも連動させるために、既存のPOSではなく自社およびグループ会社でシステムを構築することになりました。このシステムが稼働すれば、ポータルサイト上で、動画の業務マニュアルやレシピの確認など、あらゆる情報を一元管理することができます。

【Q】CKやITの効果はいかがでしょうか。

CKだけでは自販機を置くのと同じことです。システムも同様に構築したところで十分に活用できなければ無駄になります。そうではなく、スタッフの負荷を軽減することで、新たに何をするか考えることが必要です。

味を追求する、接客に注力するなどが大事ですが、お客様が大阪王将のどこに価値を感じていただけるのか。その見極めをCK化、IT化とともに取り組んでいるところです。働き方改革の一環であり、結果は出ると思っています。

職人の育成とITの活用

【Q】大阪王将はこれまで人材育成に注力されてきました。

われわれは「どこを目指しているのか」「何を大切にしているのか」という理念の浸透が何より大事だと考えています。

理念は、様々な機会を作り従業員への浸透を図っています。朝礼や会議、全社員を対象にした座談会形式のミーティングなど、ことあるごとに伝えています。また、社員の誕生日にはバースデーメッセージを直前に送っています。そこでも相手のポジションや役割を考慮しながら、理念を混ぜて送っています。

理念を伝えていくことに効率的な方法はないと思います。地道に何度でも絶えず伝え続ける。お店の生産性に関わる部分とは違って、理念の浸透に効率を求めた瞬間に、理念の浸透は滞ると思います。

【Q】 ITによる省力化が進んだとしても、職人技の継承は必要です。

もちろんそう思います。そのための研修プログラムもあります。正社員もFC契約しているオーナーさんも区別なく、まずは「大阪王将大学」という研修センターに入っていただいています。

そこでトレーナーの指導のもと、調理の基本、接客の基本を覚えることから始まります。まず30日間、Off-JT、OJTを行い、その後の30日間で店舗研修を行います。この合計60日が1セットとなります。

最終的には検定を受けてもらうのですが、例えば新店開業の際、店の規模にもよりますが検定合格者が3人いないとオープンできません。フードコートであれば合格者が1人必要です。そういう基準を設けています。

さらに検定に合格しても、基本的には1年更新が必要です。1年たったら、また更新の検定を受けていただきます。レシピが変わったり、新しい技術が出てきたりするので、それを習得してもらうためです。

デジタルとおもてなしの融合を

【Q】最後に、2024年に向けた展望をお聞かせください。

2024年はコロナ禍の影響から解放される年として、本格的にスタッフに還元できる施策を考えていきます。その内容はこれから決めていきますが、まずはスタッフを笑顔にしたいです。そして、それがお客様に伝わればいいと考えています。IT化によるDXと融合したおもてなしの向上。これを前提にした仕掛け作りを、今後も続けていきます。

また、2024年は大阪王将が創業55周年を迎えます。そのスローガンに「めっちゃええやん大阪王将」と掲げているのですが、お客様にも従業員にもめっちゃええやんと思っていただけることを発信していきたいと思っています。2024年の大阪王将にぜひご期待ください。

株式会社大阪王将

本社所在地:〒573-0137 大阪府枚方市春日北町1-10-10
設立:2020年5月(創業1969年)
事業内容:加盟店向け食材の卸及び販売、外食事業のFC本部及び直営店の運営
公式ホームページ:https://www.osaka-ohsho.com/

 

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