取引先への支払は創業以来、月末締め・翌15日払い
【Q】カニ料理専門店の老舗として、2020年に創業60周年を迎えられますね。
1960年に、山陰の魚介を使った料理店として創業しました。かに道楽1号店となる道頓堀本店のオープンは1962年で、以来ずっと同じ場所で営業しています。関西エリアを中心に国内41店舗を展開(2019年7月現在)している今でも売上が最も高いのは本店です。日本で一番カニを消費している飲食店といわれることもあるんですよ。
近年は、インバウンド需要の増加で海外からのお客様もたくさんお越しになります。道頓堀本店では約6割、多い時は9割ほどが外国のお客様です。看板メニューのかにすき鍋をはじめ、カニ料理専門という業態が珍しいと喜んでいただいています。ぷりぷりのカニ脚を持ちあげ下からかぶりつく様子を、SNSにアップするのが人気のようです。
もちろん海外のお客様だけではありません。これまで長年、支え続けてくださっている地域の方々や常連様の信頼にもお応えしたいと思っています。高品質のカニ料理をお楽しみいただけるよう、全社をあげて取り組んでいます。
【Q】カニという高級食材を扱うご苦労が、色々ありそうです。
安価に提供するためにできるだけ原価を抑えたいのは、多くの飲食店の本音だと思います。特にカニは高い食材です。しかし、かに道楽が「安かろう悪かろう」という商売をしてしまってはお客様の信頼を損なってしまいます。
良いものを、いかに美味しさを引き出す調理でお出しするか。そのために我々食品部は、カニの仕入では最も良いものを選んで買い付けること、各店舗はロスを出さない工夫に心を砕いています。
店舗運営は各店の裁量に任されており、全原価の実に6割を占めるカニの原価率を管理して採算を保つのは、店長の腕の一番の見せどころです。
棚卸と取引先からの請求書をもとに1ヶ月単位で理論原価と実原価の差異を集計するケースもあれば、1週間や10日単位で集計するところもあります。当然短期のほうがブレが発生していた場合の修正が早く、ロスを減らすことにつながります。しかし、伝票を集めて手計算で行うのは大変な作業です。
さらに、月末に締めた取引分は翌月15日に支払うため、店舗での集計を1日でも早く終えて経理へまわす必要もあります。
【Q】翌月15日の支払いは、飲食業界の取引では異例の早さではないでしょうか?
新規のお取引先には驚かれることもありますね。我々にとってはあたり前で、創業時から、取引先は運命共同体であり、『利益折半の精神』が社是です。たとえば翌月末日払いでは、入金を1ヶ月お待たせしてしまいます。一度に動く金額も大きいですし、取引先の立場で考えれば、早くお支払いするほうが次の良い取引につながる、という考えなのです。
伝票集計に関しては、私が店長を務めていた2009年に食材の発注に『BtoBプラットフォーム 受発注』が導入されたことで、圧倒的に楽になりました。それまでは月末に請求書を紙でもらい、電卓をたたいて計算していたので、早くても1週間、通常10日以上かかっていたのです。
それがすべての取引データがシステム上に蓄積されているので、月末締めの2、3日後には数字が確定します。1週間、10日単位でカニだけとか、主要商品だけの原価率を出すのも、手計算とは比べ物にならないほど簡単です。原価管理も支払管理もパッとできるので、店舗は非常に助かっています。
規格書をシステムで管理し、ハラールやアレルギーに対応
【Q】カニはアレルギーの特定原材料でもあります。食の安全にはどのように取り組まれていますか?
カニはある意味わかりやすいのですが、最近は特に小さなお子様が、カニ以外のアレルギーをお持ちのこともあります。たとえばメニューに乳や卵などが使われていないか、というお問い合わせは、月に1、2度いただきます。