ウリは「価格」でしかなかった。反省から育てたブランド価値
【Q】120店舗以上展開されています。すべて食べ放題業態ですか?
焼肉業態『ワンカルビ』を中心に、和豚しゃぶしゃぶ、とり焼き・とり鍋など、122店舗(2019年3月現在)すべてが食べ放題を導入しています。また、全店舗で貫いているのが、スタッフがテーブルで注文をお伺いするテーブルオーダーバイキングです。長年、大阪を中心とした関西と九州エリアで事業展開していましたが、2018年に関東進出を果たし、2019年も出店を控えています。
弊社の前身は、食肉小売店を運営するダイリキ株式会社が1993年に始めた、外食事業です。当時は居酒屋感覚で楽しめる焼肉レストラン業態で評判を得て、急速に出店が進みました。ところが、2000年代初頭にBSE問題が発生すると、売上が激減し、債務超過に陥ってしまったのです。経営再建の試行錯誤の末に2006年にはじめたのが、食べ放題でした。
【Q】なぜ、食べ放題を選択したのでしょうか。
食べ放題は定額でいくらでも食べられます。お客様にとってこんないい仕組みはありません。しかし、失敗したら後がない、いわば飲食店の最終手段です。絶対に成功させなければならない危機感を持ったうえでの方向転換で、ダメなら外食を辞めようという覚悟でした。こう考えた背景には、出店拡大を急ぐあまりにおかしてしまった過ちへの反省があります。
当時はあらゆる面で効率を優先し、アウトソーシングでカットした冷凍肉をデリバリーするオペレーションにしていました。現場は解凍して皿に並べるだけなので特別な技術はいらず、低価格で提供できます。
しかし、これでは他社の焼肉店とまったく同じことをしているだけです。肉屋直営の強みである品質や技術といったこだわりを、我々は一度、捨ててしまいました。その結果BSEで打撃を受けてお客様が減ったことで、ただ安い価格にしか魅力を感じていなかったのだと痛感したのです。ブランド本来の価値とは何か、肉屋の焼肉店はどうあるべきか、いま一度、原点に立ち返るべきだと考えました。
非効率が価値を高める。“オンステージ”と“気づく力”
【Q】どのような改革に取り組まれましたか?
肉にこだわる原点に回帰し、アウトソーシングをやめました。肉を店内加工するには新たな調理機材や技術育成といった、手間もコストもかかります。しかし、この非効率こそが、我々のブランドに独自の価値を与えるのだという意識を、社員・アルバイトに浸透させていきました。