ありそうでなかったシーフードバル
近年の肉バルブームの影響もあり、バル業態は細分化が進んでいる。そんな中でもシーフードに特化したバルは「ありそうでない」と森山氏はいう。
「サカナバルがオープンした2012年ごろは、バルといえばイタリアンバルやスペインバルでした。現在でも、当店のように肉料理を一切出さない魚介オンリーのバルは、ニッチなジャンルです」
“ありそうでない”は、差別化もはかれてフックになる一方、リスクもはらんでいるという。
「たとえば4人で飲み会を企画した際、1人でも魚料理の気分でない人がいれば、店の候補から外れてしまいます。残りの3人に求められ、リピーター率を追求する必要があり、必然的にコストパフォーマンスの良さが求められます」
サカナバルの客単価は3,500円。バル業態だけでなく居酒屋、ダイニングバーなどのライバルがひしめく、激戦価格帯だ。
「この価格帯を求めるお客様は、ある意味とてもシビアです。同じくらいの価格帯の美味しい店に1度でも行くと、“あの店より美味しいか、コスパがいいか”が判断基準になります。基準から外れると、二度と来ていただけません。
逆にいえば、美味しいと思えばリピーターになって、“本当にいい店だから”と、知り合いを連れてきてくださいます。ですから、最低ラインの基準を高く保ち、悪いものを出さないのは絶対条件です。魚の鮮度は特に気をつかい、少しでも味が落ちる前に提供できるかを心がけています。ホールスタッフも全員、仕込みで魚をさばくスキルを身につけてもらいます」
仕入れる魚の種類は季節や天候で変わる。効率よく提供するために、メニューは各店舗の料理長の裁量に任される。そのため、店舗ごとにまったく違うメニューが、日替わりで提供されるのがサカナバルの大きな特徴だ。