店のインパクトより、地域になじむ使い勝手の良さを追求
サカナバルの各店舗に共通することは、魚介のみ扱うという基本ルールのみ。メニューだけでなく内装やロゴ、店内の雰囲気も違う。店づくりでは出店する場所の雰囲気にあわせて、その町の生活の中に違和感を生まないことを、もっとも意識するという。
「弊社の考える『いい店』は、『使える店』です。強烈なインパクトを与えるよりも、店舗周辺の日常によくなじみ、まるでずっと昔からあるような、親しみやすい店を目指しています。
オープン後に来てくださるのは地元の方です。その方々が“あの店いいよ”といっても、よく聞いてみると1度しか行ったことがない、ということはよく経験します。リピートしていただく、お客様の日常の中にさしこんでいただくことの難しさだと思います」
店舗を周辺になじませるため、リサーチは徹底的に行う。1キロ圏内の飲食店の業態や客単価、ビールの価格などをA3の地図上に書き込み、自店舗を見直しているという。
「お客様のニーズにスッと応えられる準備を整えておくことを、どの店づくりでも意識しています。内装にしても、たとえば恵比寿と六本木では町の雰囲気が違うので、なじませようとすれば当然、雰囲気は変わります」
いわば、恵比寿らしいサカナバル、六本木らしいサカナバル、と町になじませるためにメニューやテーマも変わる。それでいてサカナバルらしさが根底で保たれているのはなぜなのか。
「たとえば店を擬人化して考えると、メニューを考えるうえでも意識を共有できます。1号店の恵比寿店は長男です。しっかり者でシャツのボタンは一番上までとめてるタイプで、魚のスペシャリスト。だから調理の技法にとらわれず、フレンチでもイタリアンでも和食でもなんでも出して、居酒屋っぽく楽しんでもらいたいと考えています。新しい食材や調理法も、まず試すのは彼です。
六本木店は次男坊で、船で世界中まわってきたワイルドなタイプ。シャツのボタンは3つくらいあけているでしょう。“オレに店やらせてくれよ、シャンパン売るんだよ”といってグリルをテーマにしています。
メニュー作りでも“キャビアはサカナバル君だったら使わないけど、六本木はわかりやすく使いそうだな”と、店のキャラごとに振り分けていくことができるんです」