それならば、いっそ海産物以外にも八雲町の食材を取り揃え、町のPRも兼ねたアンテナショップのような居酒屋になれば面白い、と考えたのが後の「ご当地酒場」の原型になっています。
町の名を背負った、アンテナショップ兼飲食店の魅力
【Q】八雲町からの公認は、すぐに得られたのでしょうか。
ご当地酒場のアイデアについて、八雲町の役場と連絡を取り、私の描く理想図を伝えると、とにかく1度、詳しいお話を伺いたいという回答をいただきました。
すぐに企画書をもって、八雲町に伺いましたが、最初に、担当者の方が懸念されていたのは、お金の面で「補助金をだして欲しい」と言われるのではないかという事でした。どんな町にも、何か事業をやりたいから補助金をくれと、言ってくる人がいるそうです。ですから、僕が最初に伝えたのは、補助金は1円もいりませんから、町の協力と公認が欲しいということを強く訴えました。
結果的に、店名に八雲町という町名を掲げるのは構わないが、公認はオープンした店を見てから判断したいという回答をいただき、『ご当地酒場 北海道八雲町』は、正式オープンした後しばらくしてから『公認』をいただいています。
【Q】町からはどのような支援があるのでしょうか
まずは、町内の生産者さんの情報です。町役場では、食材ごとに『誰が作るものが美味しい』という情報を把握しています。それを教えてもらい、仕入れ先として検討することができます。
『ご当地居酒場 北海道八雲町』には、よく八雲町の出身者の方や、北海道出身者の方が来店してくださるのですが、特に地元出身の方は、店でじゃがいもの生産者さんの名前を見ては、「○○さんのじゃがいもか! この人のじゃがいもは本当にうまいんだよ、食べて見て!」と自ら宣伝マンとなって食材の説明をしてくださいます。これも町からの支援のひとつではないかと思っています。
その他の支援として、八雲町には3つの漁業連合組合(漁協)があるのですが、どこも飲食店と直接取引はしていません。なぜかというと水揚げされた魚は50kgや100kgなどもっと大きな単位で、北海道の漁業連合組合連合会(漁連)などに卸されているからです。こちらも、町の名を冠した居酒屋ということで、特別に魚1本から直接取引してくれることになりました。これは、かなりすごいことです。
【Q】『ご当地酒場』として、人材教育はどのように行なっていますか?
人材教育については、特別なことは何もしていません。ただ、町の看板を背負う以上、産地のことを深く知ることが、何より重要と考えています。そのため、アルバイトも含めて現地へ研修旅行に行っています。
研修中、町のガイドは主に役場の方です。町のバスを出していただき、生産者の方をめぐりながら、生産物のこだわりや、農業体験を通じて作り方を学びます。