油かすとの出会いが「龍の巣」の原点
「油かす」が具材として使われているかすうどんは、もともと大阪でも南大阪限定で食べられている地元めしだった。少し離れた大阪市内でも目にすることは珍しく、畑社長がかすうどんとの出会ったのは、偶然によるものだったという。
「たまたま友人から油かすを使った『かすうどん』が旨いと聞いて、食べに行きました。その美味しさに感動し、『これを、ぜひ大阪市内で販売したい』と、そのままの勢いで、かすうどん屋を開業したのです。しかし開業してすぐに課題が出てきました。『かすうどん』の味の決め手となる油かす、この品質が安定しませんでした」(畑社長、以下同)
当時の「油かす」は、脂(ラード)を採る目的で牛の小腸を揚げ煮した時に生まれてくる、単なる副産物だった。専用に調理されていないため、揚げムラやコゲなどが多く、味が安定しなかったという。
「今後、かすうどんを中心にした業態を伸ばすためには、まず、油かすの味や品質を向上させる必要がありました。そこで油かすを、専門に作るための工場を作ったのです」
製造した油かすは、いまや自社への安定的な供給だけでなく、他社へも販売されており、同社の中心的な事業のひとつになっている。
ドミナント展開を支える、食材のデータ化と在庫管理
「龍の巣」は大阪に5店舗、奈良に1店舗、博多に3店舗、そして2016年には東京初進出を果たし、各地で行列を生んでいる。人気の秘訣は、名物のかすうどんの他、ホルモン焼きや、油かすを用いたオリジナルのかすもつ鍋など、肉の鮮度を活かしたメニューにある。
「週1回、ホルモンをまとめて仕入れ、切り分けて各店に配送します。しかし地域や日によっても人気のメニューが変わるため、徐々に店舗ごとに在庫の偏りが出てきます。
ホルモンは鮮度が大切ですから、在庫の多い部位を瞬時に見極め、店舗間で入れ替えるといった素早い調整が必要です。しかし以前は、店舗間の食材の出庫・入庫などを全て手書きで管理していたため、食材の振替に時間が掛かっていました」
この課題を解決したのは食材管理のシステム化だという。同社が導入しているのは「BtoBプラットフォーム受発注」。食材の情報がオンライン上でデータ化され、出庫・入庫がリアルタイムで分かるようになった。