生産者の思いが、新業態を生む力となる
【Q】もともと建築士として、店舗の設計をされたのですね。
建築の専門学校を出て、工務店に就職しました。そこで飲食店の設計をしていたのですが、先輩たちのように図面に“線が引けない”ことを痛感しました。
なぜできなかったと言えば、そもそも飲食店において、お客様がどう動き、店側は何を必要としているか。その根本的な部分を知らなかったからです。
それをどうしても知りたくて、22歳のときに思い切って建築の会社を辞め、飲食業界に入りました。イタリアン、フレンチ、バー、流行りのレストランなど、海外も含めた店を渡り歩いた上で、2005年、31歳で飲食店をメインとした建築士として独立しました。そして同じ年に自分の店も出しています。東京・水道橋に馬肉を使った窯焼き料理の店「仕事馬」をオープンさせました。
【Q】設計と飲食店の経営の両方手がけたのはなぜでしょうか。
とにかく僕は飲食にまつわることを、1社で全部やりたかったのです。飲食店を成功させるためには設計、施工、料理、サービス、器、物件、立地といった全てが揃わなければなりません。どれが欠けても絶対に流行らないと思います。
僕がどれも欠けさせない店を作れるという証明のために、まずは自分の店を成功させなければならない、と考えました。
【Q】新たな業態を次々作り出されていますが、新業態を生み出すヒントはどこにあるのでしょうか。
自社の新しい業態は、いつも仕入れ業者さんや生産者さんとの雑談から生まれています。
例えば、いま26店舗(2017年1月現在)まで増えた『肉寿司』の場合、馬肉の生産者さんから、『高齢化で地方の馬肉の消費量が減っているから、都内の人に食べて欲しい』という話をいただいたのがきっかけでした。