どうやって東京で馬肉を食べてもらおうかと考えた時、強みに感じたのは生食できるということでした。そしてせっかく生もので出せるなら、刺身より寿司のほうがいいなと。寿司はハレの日の食べ物ですから、お客様にも喜んで注文していただけるし、単価的にも良くなるのではないかと。
【Q】今でこそジビエがブームですが、『炉とマタギ』は8年前に開発されていますね。
ジビエも仕入れ業者さんや生産者さんとの会話から生まれています。
当時、鹿などの大型害獣は、駆除後の肉に使い道がなく廃棄処分されている状態で、何とかならないだろうかという話題があちこちでされていました。
僕はイタリアンもフレンチも経験しているので、鹿肉などは下処理さえできていればジビエとして最高の食材なのに、本当にもったいないなと。
新しい業態を出す場合には、僕が知り合った人や、僕が好きだなと思っている人たちが困っていることや“こうしなければならない”に共感して動かされています。業態は作るというより、その想いをもらって、一緒に作らせてもらっているという感覚が強いです。
【Q】そうした生産者さん達への思いは、実際の店作りにどのように反映されているのでしょう。
よく飲食店はこういう取材の時に、食材メーカーや、生産者さんとも「Win-Winでやってます」みたいなことを言いますよね。
でもそんなことを言いながら、みなさん仕入れのときに“買い叩く”んですよ。
実際、最終的に泣かされているのは生産者です。ですから飲食店が真の意味でWin-Winを目指すなら、生産者さんから真っ当な値段で食材を仕入れて、付加価値をつけて売ってあげないと。
うちの店では、メニューブックの中に食材名と共に、生産地めぐりをした生産者さんの話を詰め込ませてもらっています。食事をされる前のわずかな間ですが、お客様に、この食材がなぜおいしいのかを知るきっかけになればと思っています。
クライアントとの仕事で見えた「勝利の法則」
【Q】他店の店舗設計や業態開発では、どのようなことを心がけていますか。
僕のやり方は“モノを言う設計”です。例えば、オーナーさんが店を3名で回そうと考えて設計を依頼してきたとしても、僕がそれでは利益が出ないと見れば、「2名で回せる物件にしましょう」と提案します。厨房も4坪の予定を2坪に減らして席数を増やします。