消費期限の表示義務
食品衛生法で定められる加工食品を一般消費者に直接販売する場合、賞味期限や消費期限の表示義務が発生する。代表的な例でいうと、別の施設で製造した食品を、コンビニやスーパーで販売する場合だ。また同施設内でインストア加工(店内で加工・包装する形態)し、小分けや陳列して販売するものにも表示義務がある。スーパーの店内調理、製造工場の敷地内にある販売所などが挙げられる。
加工食品の例 | 消費期限の表示義務 |
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◎品質の劣化が極めて少ないもの でん粉、チューインガム、冷菓、砂糖、アイスクリーム類、食塩、うまみ調味料、飲料水及び清涼飲料水(ガラス瓶入りのもの(紙栓をつけたものを除く。)又はポリエチレン製容器入りのものに限る。)、氷 ◎酒精飲料 | 省略可 |
◎上記以外の加工食品 | 表示義務あり |
一方で、例外もある。消費者の注文に応じて調理・提供する場合には表示義務がない。主に飲食店におけるテイクアウト・デリバリーの弁当や惣菜、ベーカリー店のようなその場で容器に詰めて対面販売するケースだ。ただしセントラルキッチンなどほかの場所で調理・製造したものを販売する場合は表示義務が発生する。
販売形態 | 消費期限の表示義務 |
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別の施設で加工した食品の販売 | 表示義務あり |
同施設内でのインストア加工し、小分けや陳列を行う食品の販売 | 表示義務あり |
注文に応じてその場で提供・対面販売(飲食店のテイクアウトやデリバリー等) | 表示義務なし |
表示義務がない場合でも、安全な食品提供をするため状況に応じて消費期限の表示は積極的に行うべきである。そうした配慮をすることで、消費者も安心して食事することができる。
「年月日」だけでなく時間表示も必要?
品質の劣化が早い弁当や惣菜などの消費期限は、「年月日」に加えて「時間」も表示することが望ましい。ただし時間表示に関する義務はなく、必要に応じて行うものとされている。時間表示がなかったからといって違反になるわけではないが、消費者の安全面を考慮すると時間表示も行った方がよいだろう。
消費期限の設定方法
一般的に食品の消費期限を設定する場合、食品の原材料や作り方、保存方法などに応じて適切な検査を行う方法がある。具体的には、以下のようなものだ。
●理化学試験:粘度や糖度、酸度や栄養成分、pHなど
●微生物試験:一般生菌数や大腸菌群、低温細菌の残存の有無など
●官能試験:視覚や嗅覚、味覚といった感覚的な評価
主に時間の経過による食品の劣化などをこれらの試験で数値化し、どの程度の日数までなら品質的に問題ないかを判断している。もちろん食品によって許容可能な指標が変わってくるため、適切な検査項目を選択することが重要だ。
そして導き出した期限に1未満の安全係数(おおむね0.8)を掛けて、客観的に設定した日よりも短い期限を設定することで、より安全性を保つ配慮も必要となる。
実際の消費期限 10時間 | × | 安全係数 0.8 | = | 表示される消費期限 8時間 |
弁当や惣菜、調理パンの場合
飲食店やベーカリー店では、調理した弁当やパンなどをそのままの温度や簡易的な容器に詰めて提供することも多いことから、一般的な加工食品よりも品質の劣化が早くなりやすい。
また調理した食品は、
●多種多様な具材
●調理後の温度管理や保存方法
●詰め込む容器の密閉性
などの要因で品質の劣化速度が異なるものだ。基本的には当日の消費期限を設定し、持ち帰ってすぐに食べることを想定した時間を記載するのが良いだろう。
テイクアウト専門の弁当店
テイクアウト専門の弁当店などでは、調理後2~3時間と比較的短い期限を設定しているケースが多い。例えば、オリジン弁当を展開するオリジン東秀株式会社では、原則として調理後2時間を消費期限に設定している。消費期限の設定に迷っている場合は、一度管轄の保健所に相談してみるのも手段のひとつだ。
参考:よくあるご質問「お弁当やお惣菜の消費期限はどのくらいですか?」
食品表示ラベルプリンタで消費期限を記載
消費期限を記載するには、食品表示ラベルを貼り付ける方法が一般的だ。特に食品をインストア加工するなどの販売形態によっては、消費期限の他に保存方法や添加物などの記載も必要になるため、食品表示ラベルの作成が必要になってくる。
とはいえ、ラベル作成にはラベル専用のプリンタが必要なうえ、ある程度の時間や手間が掛かる。そうした際には、インフォマートとブラザー販売が連携した「食品表示ラベル作成・印刷サービス」を利用することで効率的に業務を遂行しやすい。商品毎の消費期限のほか、原材料やアレルギーなどの情報をパソコンでデータ化し、ブラザー販売のラベルプリンターで印刷できる。
様々な食材を使った弁当などの添加物やアレルギー情報の漏れをなくし、正確なラベル作成を実現することが可能だ。テイクアウトやデリバリーのメニューを追加する際にも、これらのシステム連携でスムーズにラベルが作成できるだろう
表示義務がなくても消費期限は表示すべき
コロナ禍による客足の低下などで、飲食店では店内メニューの提供だけでは売上が厳しく、テイクアウトやデリバリーサービスを始める店舗もあるだろう。
店内で食事する場合と異なり、消費者が商品を持ち帰ったり、中には数日後の食事として商品に手をつけたりする消費者もいるため、食品の安全性に十分注意するべきである。食品を安全に提供するためにも、正しく消費期限を設定・表示してほしい。
[参照元]
消費者庁「早わかり食品表示ガイド令和4年1月版」(PDF)
消費者庁「食品表示基準Q&A平成27年3月版(最終改正令和3年3月17日消食表第115号)」(PDF)
消費者庁「加工食品の表示に関する共通Q&A(第2集:消費期限又は賞味期限について)」(PDF)
消費者庁「食品期限表示に関する一般(消費者)向けの説明資料について」(PDF)
厚生労働省・農林水産省「食品期限表示の設定のためのガイドライン(平成17年2月)」(PDF)