食品製造業の工場監査
消費者に提供される加工食品は、さまざまな原材料を使用し多数の製造工程を経て製造されるもの。その過程で安全性の確保や品質の高さを維持することは、食品製造における大きな課題となっている。
たとえば、規格外製品の発生や異物・細菌の混入などの生産トラブルにより、損失や製品の大量廃棄が出てしまうことも少なくない。そのため、安全かつ高品質な食品を提供し続けるためには、実際の製造現場をチェックすることを目的とした工場監査が欠かせない。
また工場監査は、顧客との信頼性を高める上でも必要不可欠な要素といえる。きちんと対応し、第三者機関などの確認を受けることで、取引先に質の高い食品を製造していることを示すことができる。
工場監査の種類
工場監査は、主に3種類に分けられる。
・自社で実施する第一者監査(内部監査)
・取引先等が行う第二者監査
・ISOの監査員などによる第三者監査
第一者監査は、その名の通り自社の人員で構成された監査員によりチェックされるもの。標準作業やマニュアル通りに業務が実施されているか、その作業工程がISOの要件を満たしているかなどを判断することが目的だ。
製造工程の良し悪しの判断だけでなく、ムダな作業の発見やより効率的な方法を模索するなど、細かい課題を見つけて改善する狙いもある。第二者監査は、取引先や委託先、親会社などによる監査のこと。利害関係のある企業やサプライチェーン関連の組織を確認する。
そして第三者監査は、ISOなどの独立した機関がそれぞれの要求事項を満たしているかを査定するもの。「ISO22000」や「FSSC22000」といった、食品安全に関する国際規格の取得や更新審査などが挙げられる。
監査で気をつけるべき5つのポイント
食品工場では、消費者の安全や製品の質を保つために細かな衛生管理が求められる。もちろん監査の対象となるのも、作業工程だけに留まらない。以下のような点などを意識しつつ、工場内の衛生環境を整えていくべきだ。
監査項目 | 指摘事例 |
---|---|
施設への入室管理 | 「作業場やクリーンルームへの入室方法と手順は間違っていないか」 「従業員の身だしなみチェックをきちんとしているか」 「来客に対する入室ルールを実施できているか」 「持ち込み禁止物のルールが定められているか」 |
製造工程の確認 | 「作業工程図(フローダイアグラム)を作っているか」 「作業工程図と現場の作業は一致しているか」 「設備の管理不備のチェック項目はあるか」 「適切な設備のメンテナンスを実施しているか」 「加熱や冷却温度などの記録や保管ができているか」 |
工場内の清潔感の維持 | 「施設内の清掃ルールを設けているか」 「5Sもしくは7Sが徹底されているか」 「防虫や防鼠の対策を実施しているか」 「機器や設備の洗浄ができているか」 |
製品の検査方法や異物混入 | 「異物検知できる仕組みが導入されているか」 「検知機器の対象や使い方が適切か」 「廃棄品についてルールが徹底されているか」 |
製品や原材料情報 | 「製品規格書を作成しているか」 「仕様書などに記入漏れはないか」 「法令等で定められた基準値や項目を満たしているか」 「仕入れ先から原材料情報を正しく入手できているか」 「特定原材料等の合計28品目が区別されているか」 |
他にも農林水産省が公開している「FCP(フード・コミュニケーション・プロジェクト)共通工場監査項目」には、さまざまな指摘事例が掲載されているため、監査対策の参考にするとよいだろう。
工場監査における衛生面・品質管理のポイント
食品工場の監査において、施設や設備はもちろん、従業員などの衛生管理の確認事項は多い。実際にどんな場所を内部監査などで見るべきなのか、改善すべき点を見ていこう。
工場内の衛生管理
工場内を清潔に保つ基本は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底である。食品工場の多くでは、それに加えて微生物や細菌に関する対策も重要となるため、「洗浄」と「殺菌」の2つを合わせた7Sによる衛生管理が求められる。
たとえば必要な物と不要な物を区別し、要らないものをしっかりと撤去する意識を持つこと。不要な物がずっと置いてあると、その場所の清掃が行き届かず害虫やねずみなどの潜伏場所にもなり得る。
場所の定位置化や表示による整頓を行うことで、物の出し入れなどが素早くなり、作業効率の向上につながる。清掃作業のルール化や点検の実施により、施設内の清潔感を維持することが可能だ。
洗浄や殺菌には、適切な設備や機器の導入、道具の管理が求められる。また定期的な細菌数の測定で、その取り組みにどの程度効果があるかを確認することも忘れてはいけない。