いま注目の培養肉とは?市場規模と今後の成長率を解説

最新ニュース2023.10.03

いま注目の培養肉とは?市場規模と今後の成長率を解説

2023.10.03

いま注目の培養肉とは?市場規模と今後の成長率を解説

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食分野の新たな技術として市場規模が拡大しつつある培養肉。将来的な食料不足や環境汚染などが世界中で問題視される中、それらを解決する手段の1つとして注目が集まっている。

日本ではまだ実用化されていないものの、培養肉に関する研究は日々行われており、様々な食品企業が取り組んでいる事業の1つだ。では一体培養肉とはどんなものなのか、培養肉を活用するメリット・デメリット、今後の課題などを解説する。

目次

培養肉とは?

培養肉とは牛や豚、鳥といった動物の細胞を培養することで作られる人工の肉だ。培養肉の主な目的は、既存の牛肉や豚肉、鶏肉などに変わる新たな代替肉としての利用である。

培養肉は将来的に実用化が考えられており、食料危機や環境問題への解消に繋げられるなどの期待が高まっている。

培養肉と代替肉(大豆ミート)の違い

“培養肉”は動物の細胞から作られる動物の肉であるのに対して、“代替肉”は肉のような味・食感を持ちながら、大豆などの植物性の原料からつくられる食品のことを指す。

大豆ミートなどの代替肉は大豆やそら豆などが主原料として使われており、低脂肪・低カロリーの食品だ。こうした植物由来の代替肉はすでに流通しており、スーパーなどで購入することもできる。

関連記事:代替肉とは?大豆ミートの商品開発事例と食品表示ルール

既存の食用肉があるにも関わらず、なぜ培養肉に注目が集まっているのだろうか。

培養肉に注目が集まる理由

培養肉が注目される背景には、現状の食料事情や世界情勢における課題が挙げられる。中でも大きい要因として、世界的な人口や食肉需要の増加により食肉が不足する可能性があるということだ。

2021年時点で世界人口は約78億人であり、国連の推計では2030年までに85億人、2050年には97億人に増えることが予測されている。
参考:国際連合広報センター「人口と開発

さらに経済発展により、世界的な食料需要や肉類消費量は増加すると見られている。農林水産省の資料では、2010年と比較すると2050年の肉類需要は1.6倍ほどに伸びることが予測されている。
参考:農林水産省「世界の食料需要の動向

これらのことから将来的に食肉不足の可能性が予測されるため食料危機問題への切り札として世界的に培養肉の研究が進められており、市場規模も高まっているのが現状だ。

例えば、培養肉の世界的な市場規模は2050年時点で7,000億円ほどと想定されている。国内市場においても90億円程度まで拡大する予想だ。
参考:農林水産省「令和3年度細胞培養食品等の法制度等・フードテック市場規模に関する調査委託事業

こうした時代背景も相まって、いま注目されている培養肉。さらに培養肉のメリット・デメリット、日本国内での企業の取り組みについて詳しく見ていこう。

培養肉のメリット

培養肉はその特殊な生産方法により、従来の食肉にはない様々なメリットがある。主なものとしては以下の通りだ。

・安定してタンパク源を供給できる
・食中毒や感染症のリスクが少ない
・資源や環境への負担が少ない

安定してタンパク源を供給できる

先にも上げたとおり、将来的な人口増加や食肉の消費量増加に伴い、重要なタンパク源が不足してしまう懸念がある。培養肉が実用化されることでその不足分を補える。

また豊富なタンパク質が豊富な昆虫食も近年注目されているが、抵抗感がある消費者も多い。培養肉に関しても、動物由来の本物の肉に対し抵抗があるかもしれないが、国内でも肉本来の味、香り、触感などのおいしさの研究開発が進展しており「食べられる培養肉」の開発に成功している。

食中毒や感染症のリスクが少ない

培養肉は、衛生管理が徹底された無菌状態の環境で作られる。そのため、一般的な飼育されている牛や豚、鳥といった家畜と比べると細菌やウイルスなどの汚染リスクは少ない。

より安全な食品を消費者に提供することは、食中毒や感染症によるトラブル防止の効果も期待できる。

資源や環境への負担が少ない

畜産を行うには、牛や豚、鳥などに与える穀物や飼育するための土地など、様々な資源が必要になってくる。しかし培養肉は培養液の中で細胞を培養して増やすため、家畜などから食肉を生産する場合に比べて少ない資源で作ることができるのがメリットだ。

また培養肉の研究を進めている日清食品グループによると、大規模な畜産を実施するには土地を確保するための森林伐採や排水による水質汚染といった環境問題も挙げられる。加えて牛のげっぷはCO2の25倍ほどの温室効果があるメタンガスが含まれるという。培養肉はそうした自然環境への負担を抑えられるため、SDGsへの取り組みにも繋がる。
参考:日清食品グループ「培養肉研究が必要な理由

培養肉のデメリット

培養肉にはメリットだけでなく、いくつかのデメリットもある。しかし今後の研究によってさらなる改善を遂げれば、既存の食肉に取って代われる存在となる可能性も高い。

具体的な課題としては以下の通りだ。
・生産コストが高い
・複雑な構造の再現が難しい
・消費者が抵抗感を抱く

生産コストが高い

将来的に1頭の牛を元に大量の肉が作れる構想があるとしても、現在ではまだ開発費や製造コストが高いと言われている。特に細胞を増殖させる過程で扱われる培養液の主成分には、高価な動物由来の血清が使われておりコストがかかる。

そのため、現状の課題としてはいかにして原材料のコストや開発環境を整えるかなどが挙げられる。まだ発展途上の分野であるため、今後の企業の取り組みにも目が離せない。

複雑な構造の再現が難しい

大きく分厚い肉を形成するには、筋肉や血管といった立体的な構造を再現できる技術が必要になる。しかし現状だとミンチ状の肉は作れるものの、ステーキ肉のような形を再現するのは難しい。

日本国内においては、厚みのある肉塊や肉本来の食感を目指して様々な研究を行なっており、サイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功した事例もある。

消費者が抵抗感を抱く

一般消費者にとって、培養肉はどんな作り方でどのような食べ物かよく分からず、不気味な印象を持ってしまう方もいるだろう。科学的根拠に基づいていたとしても、やはり未知の食べ物を口にするのはやはり不安や警戒心を抱いてしまうだろう。

培養肉の実用化には、味や食感といった直接的な要因だけでなく、そうした「人工的に作られた肉」に対するイメージを払拭するという課題も挙げられる。

最新の技術に触れる機会も少ないため、現在はまだ培養肉を食べるということに関して、ほとんどの消費者は抵抗があるだろう。そう遠くない未来に、培養肉が市場に出回る時代が来るかもしれない。消費者が「培養肉は安心して食べられる食品だ」と思えるよう、生産技術、衛生管理方法などの情報を介して認知拡大を図っていくことが重要だ。

培養肉の作り方

培養肉の生産方法については企業や研究機関によって様々だが、主に以下のような流れで行う。

1. 動物から種細胞を摂取する

2. 培養前の下準備
摂取した細胞の保存や細胞をバラバラにほぐすなどをし、細胞を増やす前の下ごしらえをする

3. 専用の容器や装置に培養液と細胞を入れる
細胞を培養液に浸して一定の期間置いておくことで、細胞を増加させる。

4. 増殖させた細胞を取り出して加工する
取り出した細胞から培養液を洗い流し、食品としての加工を施す。増殖した細胞と培養液を型に流し込んで、立体的な構造になるよう組織をつくる方法もある。

培養肉の安全性について

培養肉における課題の中でも特に重要な点が、「実際に食べても大丈夫なのか」という安全性についてだ。日本ではまだ実用化されていないため、安全に食べられるかどうかは議論されている最中と言える。

培養肉の安全性を確認するためには、どういった基準を設けるのかなどのルールづくりからスタートしなければならない。消費者が培養肉を食べられるのは少し先の話になりそうだ。

ただし海外では、すでに培養肉を販売している事例もある。2020年にシンガポールで世界初となる人工培養鶏肉(ナゲット)の販売が承認されたケースだ。今後このような事例が増えることで、世界的なモデルケースとして培養肉の安全性が実証されることにも繋がる。
参考:農林水産省「細胞農業

培養肉への日本企業の取り組み

日本国内においても、培養肉の開発や研究を推し進めている企業はいくつかある。具体的には、以下の通りだ。

日本ハム株式会社

日本ハム株式会社の研究では、培養液に使う動物血清を一般的な食品由来のものへの代替に成功している。このような事例から、培養肉の生産にかかる資源を低価格かつ安定的に供給できる未来は近いかもしれない。

参考記事:培養液の主成分である動物血清を食品で代替することに成功

日清食品グループ

日清食品は、東京大学と共同で筋組織の立体構造を再現した「培養ステーキ肉」の作製を目指して様々な取り組みを実施。そして2019年には、世界初となるサイコロステーキ状の大きな筋組織の形成に成功している。

また日本では初めて「食べられる培養肉」も作っており、実際に研究関係者の試食が実現した。こうした実績をもとに、2024年度中には「より大きい培養肉の作製」「肉本来の味や食感を忠実に再現」できる基礎技術の確立に取り組んでいる。

参考記事:日本初!「食べられる培養肉」の作製に成功

今後の培養肉の動向に注目しよう

培養肉は今や世界的に注目を集めされ始めており、将来的な市場規模の拡大が予想されている。日本国内においても研究を進めている企業が複数あり、今後の動向にも目を向けておきたい。

一方で実用化に向けた法整備やルールづくり、安全基準の確立などの課題も挙げられる。しかし食料不足の解消や環境問題の改善が期待されており、SDGsへの取り組みにも繋がるなどさらなる成長が期待される分野だ。引き続き今後の動向に注目していきたい。

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