飲食店の海外進出のメリットとは?上場企業の事例や進出ステップも紹介

最新ニュース2023.10.17

飲食店の海外進出のメリットとは?上場企業の事例や進出ステップも紹介

2023.10.17

飲食店の海外進出のメリットとは?上場企業の事例や進出ステップも紹介

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近年、日本の外食市場は競争激化や消費低迷、原材料高騰などの影響により、飲食店経営は難航しているのが現実だ。飲食店の業種にもよるが、例えば居酒屋は「安くておいしい」というイメージも定着しているため、値上げも簡単ではない。

そういった背景もあり、販路拡大を求めて海外進出する日本企業も増えている。この記事では、日本の飲食店の海外進出の現状やメリット、成功事例、海外進出のステップなどについて解説する。

目次

日本の飲食店の海外進出の現状

外務省によると、海外における日本食レストランの数は増加傾向にあることがわかる。店舗数と地域別の店舗数は以下の通りだ。

2006年2013年2015年2017年2019年2021年2023年
店舗数約2.4万店約5.5万店約8.9万店約11.8万店約15.6万店約15.9万店約18.7万店

 

出典:農林水産省「海外における日本食レストランの概数(令和5年)

2006年には2.4万店だった店舗数が2023年には18.7万店と7倍ほど増加しており、日本の飲食店の海外展開が増えていることがわかる。中でもアジア圏は他の地域と比較しても店舗数が多い傾向にある。

日本の飲食店が海外進出するメリット

飲食店を海外展開するメリットは以下が挙げられる。

● 販路の拡大
● 日本食の需要増加
● 利益の増加

販路の拡大

同一商圏での競争激化や市場縮小などの問題により日本の飲食店は飽和状態といわれている。そのため、国内で需要の取り合いをするよりも、海外展開したほうが販路を拡大できる可能性が高いといえる。また、国内店舗の売上が減少した場合にも、海外展開していればその影響を抑えることができリスク分散にもつながるだろう。

日本食の需要増加

JETROが海外6都市で実施した「好きな海外料理ランキング」では、日本料理が1位であるとの結果が出ている。また、世界的な健康志向の高まり、2013年には和食がユネスコ無形文化遺産として登録されたこともあり、今後も世界中で日本食の需要が伸びていくと考えられる。海外から日本食の需要が増加している今、海外進出は事業拡大のチャンスにもなり得る。

参照:JETRO「日本食品に対する海外消費者アンケート調査-6都市比較編-」より

利益の増加

海外では日本食の付加価値が高いため、日本国内より売上の増加も見込める。進出国の物価が安ければ食材費などコストをおさえられ、結果的にFLR比率の低下にもつながる。

*FLR比率:食材費(Food)・人件費(Labor)・家賃(Rent)が占める割合のこと

関連記事:飲食店経営に必要なFLコストとは?業態ごとの適正比率と削減方法を解説

飲食店を海外進出させて成功した事例5選

飲食店を海外展開した上場企業の成功事例を紹介する。

定食:大戸屋による海外進出

株式会社大戸屋ホールディングスは、2005年にタイ・バンコクに1号店をオープン。以降、台湾やインドネシア、香港、シンガポール、インドネシアなどにも出店し、2022年4月時点で海外に113店舗展開している。海外店舗でも日本と同じ味・品質での提供を方針とし、調味料や主要食材を日本から輸出している。

香港大戸屋ごはん処の料理長は日本食普及の親善大使に任命され、香港における日本食普及に貢献した。また、アメリカには天ぷらを専門とした「天婦羅まつ井」をオープンし、「ミュシュランガイド」ニューヨーク2016年で初のミシュラン1つ星を獲得した実績もある。
参考:大戸屋公式HP「にっぽんの定食を世界へ

ファミリーレストラン:サイゼリヤによる海外進出

株式会社サイゼリヤは2003年に上海に海外進出をして以来、広州や北京、香港などにも出店しており、2022年8月時点で海外店舗数は478店舗にまで増加している。

価格はどの国でも、「安い・コスパがいい」と思われる水準に設定。日本から派遣された社員は数名で、店舗設計・味の調整をする本部スタッフ、店長などはすべて現地採用している。
参考:サイゼリヤ「2022年8月期決算資料

ハンバーガー:モスバーガーによる海外進出

株式会社モスバーガーは日本のハンバーガーショップであるモスバーガーを1991年に台湾初出店して以来、シンガポールや香港など、海外店舗数は457店舗(2023年8月末時点)にも上る。

醤油や味噌など日本の食材を使ったテリヤキバーガー、ライスバーガーなどの商品開発により日本の食文化を表現。現地加盟店と契約を結ぶフランチャイズで海外展開している。
参考:モスバーガー公式HP「店舗数

カレーライス:壱番屋による海外進出

カレーハウスの株式会社壱番屋は、1994年にアメリカのハワイ州に海外出店を開始。その後アメリカやイギリス、中国などに進出し、2023年2月時点で海外店舗数は208店舗である。

海外でも国内と同じメニュー・スタイルで提供しており、日本式のサービスの実施や女性を意識した店舗・メニューに切り替えるなどして認知度を高めた。
参考:壱番屋公式HP「店舗に関する情報

牛丼:吉野家による海外進出

牛丼チェーンの株式会社吉野家は、1973年から米国に海外進出を開始。その後、台湾や中国、マレーシアなどに進出し、2022年時点で海外店舗964店舗(吉野家とはなまるの合計店舗数)となっている。

海外では「BEEF BOWL」の名で販売し、牛丼のイメージをしやすいようにした。インドネシアの吉野家ではイスラム教徒に配慮し、インドネシア向けの製造ラインを別途設け、ハラル認証を取得した。(ハラル認証:イスラム法に則って生産・提供されたものであると認めること)
参考:「海外展開の歴史」
参考:吉野家公式HP「海外展開の歴史

飲食店を海外進出するための6ステップ

飲食店を海外進出したいと考える場合、開店までの流れを知りたい経営者も多いだろう。ここでは海外進出するためのステップを6つに分けて紹介する。

・事前リサーチ
・事業計画書の作成
・補助金申請・資金調達
・現地にて物件選定
・店舗づくり
・開業手続き

事前リサーチ

海外進出をする場合、事前リサーチを実施することが重要だ。出店する地域の市場規模や動向、物価を調べるのはもちろん、それ以外にも以下の項目を調べるといいだろう。

● 出店国や現地の法律
● 出店エリアの流行やニーズ
● 競合の有無
● 治安

インターネットや新聞、雑誌などから幅広くリサーチを進める以外にも、SNSなどを利用し、日本に住む外国人に聞く方法もある。情報はすぐに古くなってしまうため、候補が複数国ある場合は効率的なリサーチが欠かせない。

国によっては法律で海外の店舗進出を禁止している場合もあるため、法律の把握も重要だ。

事業計画書の作成

リサーチした情報を元に事業計画書を作成する。飲食店の事業計画は「投資計画」「売上計画」「損益計画」「返済計画」の4つに分類される。水道光熱費や人件費など、それぞれをさらに細分化して計画書を作ろう。また、現地パートナーと共同で行う場合は開店資金を折半することもあるため、事業立案時はそれも視野に入れておく必要がある。

補助金申請・資金調達

自己資金だけで海外出店できない場合は、金融機関やベンチャーキャピタルから融資を受けなければならない。しかし、必要な資金のうち自己資金が3割程度ないと、融資を拒否される可能性もあるため注意が必要だ。

日本政策金融金庫では「海外展開・事業再編資金」という補助金制度により海外展開を行う企業への支援を行っており、それを利用する方法もある。補助金を利用する場合は時間がかかるため、早めに準備しておくと安心だ。
参照:JFC|海外展開・事業再編資金

現地にて物件選定

現地にて事前計画に沿った物件の選定をしよう。賃料や立地だけでなく、治安や繁華街の様子も考慮しつつ、自社に合った物件を選ぶ必要がある。理想をすべて満たすような物件を見つけることは難しいため、妥協できる点や譲れない点など、優先順位を決めておこう。

店舗づくり

次は開店に向けて店舗工事やメニュー開発、人材雇用なども行う必要がある。現地パートナーと相談しながら店舗づくりをすれば、地元に合った価格やメニュー設定が可能だ。また、現地の施工業者に内装を依頼する場合も現地パートナーとの連携が重要になる。

開業手続き

海外で飲食店を開業するには所定の手続きが必要だ。国によって手続きは異なる。手続きに誤りや漏れがあると法律に反してしまう場合もあるため、海外進出をサポートする企業や出店国の法律の専門家に相談するといいだろう。

フランチャイズで進出をするのも1つの方法

海外出店する際、現地の外食企業と組んでフランチャイズ展開する方法もある。フランチャイズで進出するメリットは以下が挙げられる。

● 自社ブランドを短期間に拡大・確立できる
● 少ない資本・労力でスムーズなビジネス展開が可能
● 店舗を保有している加盟店であれば開業までの初期費用の削減や時間短縮が可能
● 安定したロイヤルティが見込める

フランチャイズでは現地の加盟店と契約して店舗経営するため、自社の力で一から出店するよりも時間も資金も少なく、スムーズに海外進出ができるだろう。

関連記事:飲食店のフランチャイズ開業方法と経営改善のポイント

飲食店の海外進出は可能性を秘めている

日本は人材不足や物価高騰により国内で飲食店の経営をしていく課題も尽きない。自社のブランドやコンセプト、今後の展望を見直した際に、新しいビジネスチャンスへの挑戦として海外出店も1つの選択肢にしてもよいだろう。

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