サブスクリプションは継続的ビジネスモデル
サブスクリプション(サブスク)という言葉は、もともと雑誌などの定期購読を意味していた。現在では、商品やサービスなどの利用期間に対する料金形態のひとつと捉えられている。アマゾンが無料配送などの会員特典を提供する「アマゾンプライム」、映画など動画コンテンツの定額配信サービス「ネットフリックス」といった、都度購入ではなく定額で一定期間利用できる権利を提供するビジネスモデルだ。業種を超え様々なサービスが登場し、消費者の間に定着している。
その普及の背景には、消費者のモノやサービスへのニーズ、価値観の変化があるといわれている。モノ消費よりコト消費、買い取って所有するよりシェアして利用と、意識がシフトしているのだ。
従来の販売モデルの場合、事業者と消費者との関係性は、販売時に完結していた。メンテナンスやアフターサービスなどの機会はあるものの、基本的には売ることがゴール。重視されるのは、購入に至るまでのコミュニケーションや方法論だ。
一方、サブスクリプションは、売った後も関係性が持続する。ただし、リピートが前提とはいえ、毎月もしくは毎年支払う金額に見合うだけの効果や満足感が得られなければ即解約されるだろう。関係性の継続のためには、提供するモノやサービスの質の向上や改善を続けていくことが重要となる。
実は飲食ビジネスになじむ、サブスクリプション方式
●割引定期券 ・会計が毎日 100 円引き(月額300円、ファミレス) ・期間中、牛丼・カレーなど70円引き(200円、牛丼店) ・期間中、天ぷら一品を100円引き(300円、うどん店) ●会員制(人数制限・招待制など) ・5,000円でコース料理提供(年会費14,000円、焼肉店) ・何度でも来店して飲食可能(月額30,000円、フレンチ店) ・カレー1日1杯無料(月額3,980円、カレー店) ●定額使い放題 ・グループ内の居酒屋間で飲み放題(月額4,000円、居酒屋) ・クラフトビール平日1杯無料(月額2,496円、居酒屋) ・ラーメン毎日1杯無料(月額8,600円、ラーメン店) ・かけそば・もりそば毎日1杯無料(月額3,500円、そば店) |
実際に、業種を超えて広がるサブスクリプションの波は、飲食業界にも及んでいる。外食におけるサブスクリプションは主に3つのモデルに大別される。
・割引定期券
割引やトッピング無料などの権利を提供する
・会員制
会費制や招待制で来店できる権利を提供する
・定額使い放題
毎月の定額で飲み・食べ放題などの権利を提供する
それぞれのモデルでサービスを提供し、大きな成果を挙げている飲食店の事例を見ていこう。
サブスク券10万枚以上発行。串カツ田中のサブスク戦略
首都圏を中心に国内265店舗(2019年11月現在)を展開する串カツ田中。2019年7月から、テイクアウト業態などの一部店舗を除くほぼ全店舗で割引定期券「田中で飲みpass(以下、飲みパス)」をスタートさせている。
月額500円の割引券の提示で、400円以下のドリンク類をいつでも何度でも、1杯199円で提供するというサービスだ(価格はすべて税抜)。
サブスク導入のきっかけは店舗の全席禁煙化・フロア分煙化だったと語る、株式会社串カツ田中の織田辰矢氏。
「2018年6月からほぼ全店で禁煙・分煙に踏み切ったことで、これまでは少なかったファミリー層のご利用を増やすことができました。
一方で、客層の変化でビールやハイボールといったアルコール類よりソフトドリンク類の売上が存在感を増すようになったのも事実です。何かアルコール需要を底上げできることはないかと、考えた施策のひとつが割引定期券という形のサブスクリプションでした」(織田氏)
飲みパスの形式は、店頭で販売するカード式定期券と、スマホからオンライン登録するWeb式定期券の2種類。客は買ったその日から使え、3杯飲めば元がとれる計算だ。
企画を担当する小林秀一氏は、「お客様にとっては買いやすく、店舗スタッフにとっても売りやすい値段だったと思う」と振り返る。
「特にカード式は、登録作業などが不要です。例えばグループ客の中でお1人、飲みパスをお持ちの方がいれば、『それ何?』と話題になり、車の運転手などの事情を除いて、ほぼ全員その場で購入されますね。
反響は予想以上で、開始から2カ月半でカード式とWeb式あわせて10万枚以上が発行されました。お客様全体の約15%にご購入いただいている計算になります」(小林氏)