「まず、フードセーフティであれば品質管理部門の方が担当しますが、フードディフェンスにおいては、品質管理に加えて人事・総務や資材、製造現場など、会社全体で取り組む必要があります。そのうえで、同じ環境で働いているのに、AIがストレスありと判定した社員としなかった社員に、なぜ差が出るのかを分析します。それが給与の差なのか、人とのコミュニケーションなのかなどですね。原因が見えたら、その差を解消する対策を会社組織全体で取ることができるようになります」(岡本氏)
重要なのは組織全体で改善をするということだ。ある1人の問題を解決しても、組織として根本的な原因が解決できないことには、2人目、3人目が続くことになるからだ。
AIサービスの活用で、問題の発生を未然に防ぐ
また、フードディフェンスへの活用が期待される別のAIサービスもある。アースアイズ株式会社が提供しているAI搭載の防犯システム「earth eyes」だ。同社広報担当の澤登舞美さんに話しを聞いた。
「『earth eyes』は、小売向けのいわゆる「万引き」防止のサービスとして開発されました。カメラ映像と各種センサーからの情報をリアルタイムに判断し、不審な動きや立入禁止エリアへの侵入などの異常を検知すると、モニターのほか従業員のスマートフォンなどにアラートを通知することができます。しかも“不審な動き”のパターンを集め、ソフトウェアを更新していくことで、より精度が上がっていきます」(アースアイズ・澤登さん)
この製品自体は、まだ食品製造現場での実用化は実現していないが、フードディフェンスにおいて、こうした技術を活用することで、防げることもあると考えられる。
「通常の監視カメラですと、トラブル発生後に過去の映像を見て『どこで問題が発生したのか?』調査する形ですが、リアルタイムでアラートが出るのであれば、すぐに対処ができるので、問題の発生を未然に防ぐことが可能になるのではと思います」(岡本氏)
従業員とより良い関係性を築き、万一の際もトラブル発生を未然に防ぐAI技術は、フードディフェンスにおける効果的な対策と言えるのかもしれない。
取材協力: 一般財団法人 JFIC日本食品検査、 株式会社ネオキャリア、 アースアイズ株式会社