デジタル化が崩壊させた駅前立地の優位性
テクノロジーの進展は、外食経営の前提条件である商圏の考え方を根本から変えつつある。議論の中で、みずほフィナンシャルグループの中馬和彦氏は、デジタル化による構造変化を次のように指摘した。
中馬氏:コロナ以降、接触できない状況下でデジタルを入れざるを得なくなり、モバイルオーダーやフードデリバリーが普及したことで、商圏の概念が劇的に変わりました。かつては駅前から何kmという世界でしたが、今はデリバリーの普及によってあらゆるジャンルがクロスオーバーして競合するようになっています。集客の面でも、従来の口コミサイトからSNSへと主役が移り、ストーリー型で情報が入ってくるようになりました。もはや駅前立地が最高という時代ではなく、むしろユーザーが探して行きたい、レンタカーを借りてでも行きたいと思うようなストーリーラインを作れるかどうかが重要になっています。一方で、食のコンテンツ化が進んだことで流行り廃りのサイクルは非常に短くなりました。常に変化を求められるため、カメレオンのような多面性がないと生き残れない厳しいマーケットになっています。
この変化に対し、モデレーターの品川翔氏は、偶然の出会いではなく、SNSを通じて必然の出会いを多くの場所で作れるようになった反面、消費者の興味関心が移り変わるスピードはかつてないほど速まっていると分析した。
文化産業として外食を再定義する行政の視点
経済産業省の上田大晃氏は、食文化産業振興チームのリーダーとして、外食を単体の産業ではなく、より広い枠組みで捉える重要性を強調した。
上田氏:経済産業省としては、外食を単体の産業として閉じるのではなく、食文化産業という広い枠組みで捉えています。外食が需要を作る出口となり、そこから農林水産業や食品加工、さらには器や包丁、日本酒といった関連産業へと波及していくからです。地域が盛り上がれば、観光や物流、インフラといった他産業にも厚みが生まれます。そのため、従来のセーフティネット的な支援ではなく、新規事業の創出や将来のキャッシュフロー構築、デフレ思考からの脱却を促すような構造改革を後押ししていく必要があります。
これを受け品川氏は、地域社会の中で自社のビジネスが持つ価値を、経営者が一歩引いた視点で再確認することが、今後の支援や活路を見出す鍵になるのではないかと応じた。









