コメの受給展望と神明グループ1兆円構想。藤尾社長が語る農業プラットフォームの全容

セミナー・イベントレポート2026.05.01

コメの受給展望と神明グループ1兆円構想。藤尾社長が語る農業プラットフォームの全容

2026.05.01

コメの受給展望と神明グループ1兆円構想。藤尾社長が語る農業プラットフォームの全容

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2024年に発生した米の需給逼迫と価格変動は、食の流通現場に多大な影響を及ぼした。国内トップシェアの米卸を率いる株式会社神明ホールディングスの藤尾益雄社長は、現在の市場を「経験したことがない激動」と断じている。

2026年4月開催の「FABEX東京2026」特別セミナーにおいて、藤尾社長は今後の需給見通しと、生産から加工、外食までを一気通貫で担うグループ構想を明かした。食料自給率の低迷と農業従事者の急減に直面する中、同社が描く持続可能な供給体制とは。

目次

民間在庫の推移から紐解く需給逼迫の真相

国内の米需給バランスは、極めて不安定な状況が続いています。農林水産省のデータによれば、令和4年から5年にかけて民間在庫が200万トンを割り込み、翌年には153万トンまで減少しました。業界で適正とされる在庫水準は180万から200万トンであり、150万トンという数字は明らかに足りない状況でした。令和6年7月から令和7年6月末の期間も、需要量713万トンに対し令和6年産は679万トンに留まり、2年続けて40万トンレベルで不足しています。この需給ギャップを埋めるために政府備蓄米36万トンが売り渡されましたが、この対応がなければ供給が途絶していた可能性がありました。

令和7年産の増産理由と在庫水準の回復予測

令和7年産の主食用米は、作付面積が前年比で約10.8万ヘクタール増加する見通しです。しかし、これは農家さんや水田面積が増えたのではなく、政府による備蓄米買い上げ停止や、飼料用米からの転換による作付け構成の変化に過ぎません。具体的には、備蓄米の買い入れ停止により約3万ヘクタール、飼料用米の面積減少により約5.3万ヘクタールが主食用米に移動した結果です。これにより令和8年6月末の民間在庫は221万から234万トンに達し、在庫水準は回復する予測ですが、決して楽観視できる状況ではないと考えています。

価格面においても、相対取引価格は令和6年産の平均が1俵あたり2万5179円となり、令和7年9月には3万6895円を記録するなど、当社が経験したことがない価格帯になっています。店頭価格の一部下落は、米卸が年度末の決算に向けて在庫処分を行った際の特売による一時的な現象であり、市場全体の高止まり傾向は続いています。

米飯加工事業による運営効率化の提案

市場環境の変化に対し、当社は米飯加工事業を戦略の中核に据えています。子会社の株式会社ウーケでは、第4工場の竣工により年間1億5300万食の供給体制を確立しました。富山県入善町の湧き水を使用し、NASA基準のクリーンルームで製造される無菌パックご飯は、添加物やpH調整剤を使用せず炊きたての品質を維持します。

現在、外食・中食業界は深刻な人手不足と水道光熱費の高騰に直面しています。厨房での炊飯工程を完全に代替できる高精度なパックご飯は、現場の運営効率化を支える有効なソリューションとなります。当社は精米を卸すのみならず、自ら加工し提供することで、着実な消費拡大を狙っています。

海外市場600店舗体制と日本米の輸出戦略

グローバル展開は、グループの成長を牽引する重要な柱です。香港での100店舗達成や、オーストラリアで180店舗を展開するテイクアウト寿司チェーンの完全子会社化を実施しました。これにより、グループ全体で国内外600店舗規模のネットワークを構築しています。

2011年にジャカルタで多様な人々が寿司を楽しむ光景を目の当たりにし、和食が世界を制する時代が来ると直感しました。現在、日本の米輸出実績において、当社は約20パーセントのシェアを占めています。海外店舗で日本米の価値を伝え、日本米のファンを増やすことで、国内の生産基盤を維持・支援する循環を確立していきます。

健康価値の再定義と高付加価値商品の開発

お米の消費減退を食い止めるため、当社は健康価値の再定義に取り組んでいます。お米を食べると太るというネガティブなイメージを払拭するため、もち麦や雑穀をあらかじめ混合した機能性米を開発しました。

具体的施策として、米粉100パーセントのグルテンフリーブランドや、乳製品不使用の玄米ヨーグルト、玄米シュレッドなどの商品を市場に投入しています。これらはアレルギー対応や美容に関心の高い層に向けた提案であり、従来の白米消費とは異なる新しい市場を開拓する取り組みです。

次世代農業者の育成とデジタル・新農法の検証

農業従事者が30年で300万人減少するという危機の中、生産現場の維持は急務です。埼玉県加須市において、プロ農家の指導のもとで次世代農業者を公募・育成し、独立を支援するプロジェクトを推進しています。兵庫県の職員を辞めて就農した方のように、人生を賭けて農業に挑戦する若手を支援し、農業を「稼げるビジネス」へと進化させます。

技術面では、JAXAベンチャーと共同で、宇宙からのビッグデータを活用した「宇宙ビッグデータ米」の栽培を行っています。さらに、水田の上で発電を行うソーラーシェアリングや、麦の収穫前に種を撒く直播栽培などの実証実験を続けています。これらはすべて、農家の収益性を向上させ、持続可能な生産体制を構築するための挑戦です。

売上高1兆円企業への展望と社会への使命

神明グループは、2026年3月期の売上高として6000億円超を見込んでおり、将来的な1兆円企業への到達を目標としています。米穀、青果、外食・中食の3部門でそれぞれシェア20パーセントを獲得する構想です。

当社は「農業のプラットフォーム」となり、生産者と消費者を繋ぐ中心で、農業を成長産業へと導く決意を固めています。日本の食を次世代へ確実に受け継いでいくために、これからも挑戦を継続してまいります。 

株式会社神明ホールディングス

設立:1950年10月18日(創業:1902年)
本社:兵庫県神戸市中央区栄町通6-1-21神明ビル
https://www.shinmei-holdings.co.jp

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