飲食業界の課題と外食チェーン3社の取り組み
日本は労働者人口の低下が進行し、企業にとって今後の人材採用はより難しくなっていく。飲食業界は定着率の安定のためにも従業員に支持され働きやすい環境作りがいっそう必要だ。
雇用・採用
従業員を確保するための工夫については、社員の募集を行っても応募が来ない場合が多いため、リファラル採用(アルバイトから社員へのステップアップ)をすることで対策を行っている。また、年間で採用計画を立てる、本部がアルバイトの活躍を把握してアプローチするなどの仕組み作りをしているとも紹介された。
育成・指導
続いて新入社員・アルバイト採用後の育成・指導・フォローアップについて話が及んだ。飲食店への就業が未経験のまま社員が入社した場合、勝手が分からずアルバイトに教わることがあり、そこに抵抗を感じて早期退職するという問題が挙がった。解決策として研修専門の店舗を作り、専門のトレーナーが各社員に同一内容での教育を実施する、中途社員は本部で研修を行うなど、初期教育の重要性が指摘された。
また、配属された店舗での教育が店長任せになっていると、研修内容と齟齬が生じることがあるため、マネージャーがケアしていく必要があるという。
コミュニケーション
コミュニケーションの観点からは、本部から店舗、社員からアルバイトへの指示の伝達手段について議論が交わされた。例えば、「フランチャイズ本部と加盟店、店舗間でコミュニケーションツールが一本化されていない」、「会社の連絡ツールが、社員の場合に与えられることも多いため、店舗の社員スタッフが本部から連絡を受け、それをアルバイトにはLINEで伝えるという手間のかかる運用になっている。個人のLINEを教えるのに抵抗のある従業員もおり、そこでも連絡がスムーズにいかない」などといった意見が挙がった。
人員配置
限られたリソースで店舗を運営することは業界共通の課題だ。今後人材が潤う未来は想像できないため、アルバイトのスキルアップを強化していく、スタッフが対応しなくてもよいオーダーシステムの導入などで業務効率化を図るなどの意見が出た。
店舗オペレーション
本部は、店舗のタスクチェックや、緊急指示があった対応の実施状況などをどのようにキャッチアップしているのだろうか。「緊急対応の場合は、担当マネージャーを介して本部から店舗に指示が伝達され、タスクが完了したら再びマネージャーがエビデンスを受けて本部に報告する」「店長が日々の業務を紙のチェックシートで確認する対応が多い」「アナログ管理のため、確認漏れ、発注漏れなどが発生している」など、現状の運用ではマネージャー、店長、社員の負担が大きくなっているという。
労働環境
上記の課題を受けて、社員の業務負荷を改善するにはどのような対策をしていくべきか。
・業務の可視化・整理
・運営オペレーションをシンプルにする
・実績数字をツールで共有する
といった意見が出た。その一方で、現状の運用では把握・管理・報告に時間がかり、なかなか対策が難しいという声も上がった。
ITツールで店舗オペレーション対策
上記課題の解決策のひとつに、店舗オペレーション管理ツールの活用が出た。串カツ田中では、店舗オペレーション管理ツール『V-Manage』を活用している。『V-Manage』は、本部・店長・アルバイト間のコミュニケーションを円滑にするチャット機能や、一日のスケジュールと業務内容を確認できる機能などがある。店舗のタスク状況を本部に共有が可能なため、業務をまとめて報告書を作成・提出するという手間もなくなり、業務負担を軽減できる。
飲食業界では、人手不足の深刻化や慢性的な長時間労働問題などの課題が、どの飲食店でも共通して生じている。だからこそ、いかに店舗の運営体制の見直しを図ることがカギになってくる。