「カタカナスシ」で寿司酒場業態ブームを起こす
株式会社スパイスワークスホールディングス 代表取締役社長 下遠野 亘 氏
株式会社スパイスワークスホールディングス代表取締役社長 下遠野氏は、建築専門学校卒業後、設計施工会社へ就職した後、飲食業界へと転身した経歴を持つ。そのため同社では、飲食店経営のほか店舗の内装デザイン、設計、企画や運営までを総合プロデュースしており、業界屈指のヒットメーカー「肉寿司」などの業態や、繁盛店を数多く手掛けてきた。
他社との連携による飲食商業施設の開発にも積極的で、2022年には代々木駅東口前にある倉庫と古民家10棟を飲食店街とした「ほぼ新宿のれん街」や、日本の祭りと食が楽しめる「浅草横町」など続々とオープン。近年は「スシンジュク」を代表とする「カタカナスシ」と呼ばれる寿司酒場業態のブームの火付け役でもあり、その柔軟なアイディアを活かして新たな飲食業態を業界に取り入れている。
「飲食には夢があると思います。いろいろな人が見て来ていただき、街を作る役割もあります。それが楽しくて横丁業態などを作り、様々な方のお手伝いをしながら、今日ここに立てています。このトロフィーをいただいたのも社員一同がんばったからです。これからも皆様とともにいいサービスを、意義ある飲食店を作っていきたいと思います」
コロナ禍でも売り上げを伸ばす高級居酒屋「天婦羅みやしろ」
株式会社MUGEN(ムゲン)代表取締役 内山 正宏 氏
内山氏は調理師学校を卒業後、ホテルや料亭、居酒屋などで料理人として腕を磨き独立した。4年連続でミシュランガイド東京の一つ星を獲得した「天婦羅みやしろ」は、コロナ禍でも売り上げを伸ばす高級居酒屋のお手本的存在となっている。高級居酒屋では若手が労働時間に質の高い教育を受けられる仕組みを構築した。
「腕がありながら独立できない料理人と出会ったことで、何かできないかと思い高級業態を開業しました。この業態はお客様に支持されているのに、20年30年のキャリアを持った方しかおらず、担い手がいなかったのです。美容業界で若手のスタイリスト達が一生懸命練習しながらカットモデルを募集しているのをみて、これと同じことができるのではと思い、少しずつ今のかたちができました。
これまで外食産業の多くの方々に支えられてきました。この賞を受賞されてきた諸先輩方のような憧れる存在になるため、もっと邁進していきたいと思います」
「ガチ中華」の先駆け店!中国各地の中華料理を日本に伝える
株式会社味坊集団 代表取締役 梁 宝璋 氏
梁氏は、出身地である中国東北地方の料理を再現・提供し、東京都内を中心に流行の兆しを見せる「ガチ中華」の先駆けとなっている。
現在は、東北地方料理だけでなく、北京料理や広東料理、湖南料理、中国各地の蒸し料理を提供する店舗も展開。2022年6月には東京・秋葉原にそうした中国各地方の料理を1つの店で楽しめる「香福味坊(こうふくあじぼう)」をオープンし、中国の食文化紹介に貢献した。
「料理人の個性を活かしてコンセプトの異なる飲食店を味坊集団で展開しています。昔は珍しかった中華料理も今では一般化して日本人の方にも受け入れられていると感じています。食は人と人とをつなぎ、誰かの笑顔を作ることもできます。16年間、外食産業に従事してきたことを誇りに思っています」
ファッション、カルチャーなどとジャンルを超えてコラボ
sio株式会社/シズる株式会社 代表取締役 鳥羽 周作 氏
ミシュランガイド東京で4年連続一つ星を獲得する「sio」の運営とシェフを務める鳥羽氏。イタリアンで料理の本質を学び、フレンチで培った創造性でジャンルにとらわれない料理を提供している。
料理に対してこだわり抜く姿勢と同じく、居酒屋や洋食店などのプロデュース業にも力を注ぐ。2022年にはローソンのUchi Caféとコラボし、鳥羽代表の監修でライチと白桃の絶妙な味わいの「白桃ジェラートバー」や「なめらかチーズワッフルコーン」などを企画販売した。また、SNS、YouTubeでの発信力も注目を集め、音楽やファッション、カルチャーなどとジャンルを超えてコラボしていった。その料理人の枠を超えた活動は飲食業界に大きな影響を与えている。
「今までの時代は、美味しいものを作る人は“使われる側”でしたが、今日表彰されている方々のような、本当にいいものを作る人たちがきちんと評価されて対価を得られるようになってきています。自分自身もひとつの指針になれるよう、お客様を幸せにしていいものを作っている方が搾取されない世の中にしていきたいです」
飲食店のDX化をLINEで一括に行うサービスを提供
LINE株式会社 池端 由基 氏
メッセージアプリ「LINE」を運営するLINE株式会社は、アプリを使って飲食事業者をDX化するサービスを展開している。飲食業界向けの主なサービスは、友だち追加したユーザーにメッセージを配信する「LINE公式アカウント」、モバイルオーダーや順番待ち・呼び出しを行う「LINEミニアプリ」、来店予約ができる「LINEで予約」など。これまで顧客との連絡手段がなかった飲食店に顧客を繋いだ。
約9300万人(2022年9月末時点)の国内月間利用者数を誇るLINEは、日本最大級のユーザー数を生かし、従来アナログで行っていた作業をLINE内で完結させ、飲食業界のDXを推進する存在となった。
「ここ数年、我々が守り続けられる繋がりは人と人だけ?とみんなに問いかけることがありました。僕らにできることは、人と人だけでなく、人と地域や人とお店など、大事な繋がりは他にもあるのではと思います。そんな思いを持ちながら、コロナ禍真っ只中でスタートしたのが、飲食業界でのチャレンジでした」
回転寿司で正確かつ迅速に商品を届ける「特急レーン」開発
北日本カコー株式会社 代表取締役社長 石野 晴紀 氏
回転寿司用コンベアの製造・販売で圧倒的なシェアを誇る北日本カコー株式会社。50年以上前から回転寿司業界に携わり、様々な業態の店舗に寿司用コンベアを中心としたロボットを提供している。最近では、寿司や焼肉をトレーに載せて、席番号を押すだけで注文者のもとに正確かつ迅速に商品を届ける「特急レーン」付コンベア機を開発。
「食品業界には食材の確保の問題、エネルギー高騰の問題、物流の問題と多いですが、これから一番悩ましいのは、やはり人手不足だと考えております。最近では特急レーンを開発し、少しでもお店で働く皆さんの生産性が上がることや、エンターテイメント性を高めることができるようなものを作りたいという思いです。今後も設備業として関わっていければと考えています」
受賞者の顔ぶれを見ると、飲食店の垣根を越えた活動でビジネスの幅を広げる事業者が多い印象だった。今後の飲食業界の発展のために、多くの人々に感動を与えられるよう一層の活躍を期待したい。