わさびの辛味を「閉じ込めたい」という想いからはじまった試行錯誤
株式会社田丸屋本店の創業は、1875(明治8)年。駅弁やお土産用途の静岡の名産品『わさび漬』を、鉄道の開通当初から販売してきた専門店として知られている。140年余の歴史をもつ老舗企業から、これほど挑戦的な新しいわさび商品が生まれたのはなぜか。もともとの構想は、2009年頃まで遡るという。
「弊社はわさび漬メーカーとして長年歩んできました。近年は、わさび漬の伝統は保ちながら、それ以外の柱も育て、わさび商品の総合メーカーとして発展する機運にあります。わさびの使用シーンを広げ、魅力を再認識できる商品、若年層ふくめより幅広い世代のニーズに応えられる商品をと模索してきたのです。
その中で、“わさびの辛味を何らかの形で閉じ込めたい”というのが、弊社の代表取締役、望月啓行の10年来の思いでした」
田丸屋本店は、同じ静岡の特産品でもある水産物の練り物加工品メーカーともつながりが深い。わさび味のカマボコやちくわの開発依頼がある中で、「商品全体がわさび味なのではなく、噛んだところだけ辛味を感じるものがあれば面白い」と開発を進めていたという。
だが、わさびの辛味は揮発性で、熱や水に弱いという特性がある。カプセル状のもので辛味を包むというアイデアはあったものの、実現は技術的に難しかった。
「カプセルなら、と当初はオブラートのメーカーに頼んだのですが、『無理です』と断られました。その後、たとえばキューブ状など、さまざまな形状を検討した結果、最終的に球状にたどり着きました。