発想の転換が生んだ、新たな大豆商品
約600億円ある煮豆市場の中にあって、蒸し豆の市場規模は決して大きくはない。だが、年々拡大成長を続けており、2015年には約20億円前後だった規模が2019年には約30億円を突破し、水煮大豆と逆転すると推定されている。市場を牽引しているのが、佃煮昆布と煮豆を主力に作ってきた老舗食品メーカー、マルヤナギ小倉屋の、『おいしい蒸し豆シリーズ』だ。
2004年の発売以来トップを保ち続け、現在のシェアは約70%(KSP-POS:2019年2月現在)。2位につける大手メーカーと2社で、市場シェアは9割を超えるという。商品企画・マーケティング推進部部長の尾鷲美帆氏は、「蒸し豆は、実は水煮豆の開発から生まれた商品」だと語る。
「時代のニーズにあわせて、甘い煮豆ではなく、甘さを抑えた豆加工品づくりに取り組むため、水煮大豆の開発をしていました。
しかし煮るという調理方法ではどうしても、うまみや栄養が流出してしまい、味気ない仕上がりになってしまいます。いっそのこと蒸してみたらどうだろう、という発想が、蒸し豆誕生のきっかけです。蒸してみると、狙いどおり、大豆本来の自然のうまみが残り、ホクホクした甘さになりました」
それまで、蒸し豆は豆腐の原材料として作られることはあっても、水煮豆のような、そのまま料理に使う用途での商品は存在しなかった。「蒸せばいい、という単純な話ではなかった」のがその理由だという。
商品として売れるものにするために、蒸すのに適した大豆の品種の選定からはじまった。また、美味しく食べられる加熱の温度や時間といった製法も、一つひとつ試作を重ね、商品化まで半年以上を要した。