また、認知度が高まったことで、他社メーカーも蒸し豆の商品展開をはじめました。競合品があることでジャンル自体が活性化し、市場は拡大しています。蒸し豆のトップメーカーとして、この盛り上がりは嬉しいですし、切磋琢磨してより良いものを作っていきたいと思っています」
業界全体を盛り上げ、蒸し豆を広める
マルヤナギ小倉屋は、蒸し豆の小売商品とほぼ同時期に、業務用も販売を開始。優れた栄養面を押し出して、特に学校給食や病院、介護老人保健施設といった、管理栄養士がいる施設に売り込んでいた。採用した神戸の学校給食では、豆ごはんなどの、それまで水煮大豆で作っていた献立を蒸し豆に変えたところ、残食率が減ったとの声があがったという。
「大豆を使った献立はそれまで、残してしまう子どもが多かったそうです。『体にいいから』という理由だけでは子どもたちは食べません。でも、美味しければちゃんと食べてくれるんです」
だが、蒸し豆が体によいとわかっていても、献立に取り入れるには課題があった。管理栄養士が献立を作る際に根拠とする、日本食品標準成分表には当時、「大豆(ゆで)」しかなかったのだ。
「そこで、弊社を中心とする蒸し豆メーカー数社で、管轄する文部科学省へかけあい、“水煮”と“蒸し”の栄養素やうまみ成分の数値の違いなどを伝え続けました。その結果、5年ぶりの改訂となった『日本食品成分表2015年版(7訂)』では、新たに“蒸し大豆(黄大豆)”の項目が追加されています」
7訂への収載によって、蒸し豆の良さをよりアピールできるようになり、販路はさらに広がっていった。外食業でも大手チェーン店から個店まで、サラダにいれたりひじきと炊き合わせたりと、幅広く使われている。
「売上比率でいえば、圧倒的に小売用がまさっています。蒸し豆はそのまま使えるという利便性や大豆の栄養がそのままという利点は大きいのですが、業務用では水煮豆のほうがコストパフォーマンスにすぐれているのです。
そこを蒸し豆でいかに切り崩していくかが課題です。水煮と蒸し豆の違いを理解して、おいしさに共感してもらえるところほど採用に結びついているので、今後も丁寧かつ確実に、蒸し豆自体を広めていきたいです」
発売から15周年。広がる蒸し豆の可能性
蒸し豆そのものの認知が高まってくるにつれ、中食で、「蒸し豆使用」と表示する惣菜類などもでてきたという。蒸し豆を使っていることが付加価値になってきた。中には「マルヤナギ小倉屋の『おいしい蒸し豆』使用」とわざわざラベルをつけてアピールする商品もあるという。
「蒸し豆は非常に伸びしろのある商品です。国内では、大豆をどのように食べるか考えてみると、圧倒的に多いのが豆腐、納豆、豆乳で、煮豆は文字どおりほんの一握り、蒸し豆はさらにニッチな市場といえます。
だからこそ、いくらでも販路を広げていける余地があるとも思っているのです。発売から15年経ち、蒸し豆が世の中に浸透してきた実感もあります。これからも積極的に登場シーンを増やしていきたいですね」
株式会社マルヤナギ小倉屋
住所:兵庫県神戸市東灘区御影塚町4-9-21
電話:078-841-1456
お話:商品企画・マーケティング推進部 部長 尾鷲美帆氏
事業内容:昆布佃煮・煮豆・蒸し豆・惣菜・その他食品の製造卸販売
公式HP:https://www.maruyanagi.co.jp/