QSCの「C」:飲食店の衛生管理で重要なクレンリネスとは?
飲食店を運営する際に重要視される「QSC」は、「Quality(クオリティ:サービスの質)」「Service(サービス:接客)」「Cleanliness(クレンリネス:清潔さ)」の頭文字を取った略語である。
中でもクレンリネス(Cleanliness)とは店舗が衛生的かつ清潔な状態を保つことを意味し、飲食店にとって、お客様の健康と安全を守るために重要な意味を持つ。
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HACCPの義務化でさらに重要になる飲食店の衛生管理
食品衛生法の改正により2020年6月からHACCPの導入と運用が義務化された。HACCPの義務化により飲食店は衛生管理の徹底が必要となっているが、メリットがあるのも事実だ。
厚生労働省の調査によると、以下の4つがHACCPの導入メリットとなっている。
1. 社員の衛生管理に対する意識が向上した 2. クレーム、事故が減少した 3. 製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになった 4. 社外に対して自社の衛生管理について根拠を持ってアピールできるようになった |
参照:厚生労働省「HACCPの普及・導入支援 のための実態調査結果」
飲食店がHACCPの考えを導入し、衛生管理を実施することで「社員の衛生管理に対する意識の向上」や「クレームや事故の減少」などに繋がることがわかる。
飲食店の衛生管理状態と利用に関する実態
2022年11月に実施された、日本トレンドリサーチとユアマイスター forbizの「飲食店の清潔感に関する調査」によると「店内が汚かったことを理由に、それ以降行かなくなった飲食店はありますか?」との質問に、60.6%が「ある」と答えていることが分かる。
また、2023年8月に実施された上記と同企業による「お店のトイレ汚れに関する調査」では、お店のトイレが汚れていると、66.1%の人が「次からそのお店を利用したくないと感じる」と答えていた。
この結果から、飲食店を利用しているお客様は思っている以上に店内の衛生状況を重要視していることが分かる。そのため、業務の中に衛生管理を組み込むことが、リピーター確保のためにも重要だといえるだろう。
営業中、飲食店の衛生管理にどれくらい注意できている?
オープン前には完璧な状態でも、営業中はどれほど店内の衛生管理ができているだろうか。飲食店の衛生管理で注意するポイントは以下の3つある。
・スタッフの衛生管理 ・店内の衛生管理 ・トイレの衛生管理 |
ここでは、それぞれの衛生管理の詳細を解説する。
スタッフの衛生管理
スタッフの衛生管理で気を付ける点は、身だしなみや手洗い、体調面だ。スタッフの制服が汚れていないか。また、爪が長いままだったり、長い髪をまとめていなかったりしていないかなど、細かい部分までチェックすることが重要だ。
スタッフの手洗いも徹底しよう。料理する前はもちろん、外から店内に入ったときやお金を触った後、落ちているものを拾ったときなど、こまめな手洗いを徹底することが大切だ。
スタッフの体調面も重要なポイントだ。頻繁に咳き込んでいるなど体調が悪いときには作業させない・帰らせるようにする。また、手に傷がある場合は手袋を着用するなど、スタッフの健康状態を把握したうえで業務に取り組んでもらうことが大切だ。
お客様に気持ちよく店舗を利用してもらうためにも、基本的なことだがスタッフの衛生面や体調管理には十分に気を付けなければならない。
店内の衛生管理
店内の衛生管理も重要なポイントだ。例えば、インテリアや小物、照明、窓枠などの細かいところにほこりがたまっていないか。また、テーブルや椅子、メニューが汚れていないかをチェックしよう。
オープン前に一度、お客様視点で店内を確認しよう。例えば、食洗器で洗ったフォークやスプーンなどのカトラリーの汚れがきちんと落ちていなかった、テーブルに拭き残しがありベタベタしていた、厨房が意外と客席から見える位置にありごみ箱が丸見え、など細かな部分に気づくことができる。
特に、テーブルや椅子、メニューはお客様が使ったあとに汚れるため、使用後の掃除も重要になる。お客様に気持ちよく食事をしてもらうためにも、開店前だけでなく営業中の掃除も定常化して徹底することが大切だ。
トイレの衛生管理
また「お店の衛生状態に関する調査結果」では、トイレの清潔感はお客様にとってまた行きたいかを考える上で重要なポイントとなる。また、トイレの汚れだけでなく、トイレットペーパーやハンドソープなどの備品が切れていないかも確認しよう。
営業中、必ずトイレの簡単な清掃と備品のチェックを行うことを徹底し、トイレ掃除は定期的にできるようにフロー化することをおすすめする。またトイレがきれいであることに加え、マウスウォッシュ、メイク直し用の綿棒などアメニティが充実しているとユーザーの評価がさらに高くなる。
お客様に気持ちよくお店を利用してもらえるよう、トイレのこまめな掃除や備品のチェックを習慣化しよう。
飲食店の衛生管理をしながらオペレーションをうまく回すには?
昨今の飲食店では、人手不足が問題になっている。また、飲食業界の売上回復の波に乗り、衛生管理を含むオペレーションがうまく回らなくなっている店舗もあるだろう。
オペレーションがしっかりと確立していない状態で、売上ばかりを求めるとスタッフの業務を圧迫し、スムーズな料理の提供ができなくなったり、衛生管理がうまくいかずにクレームが増加したりし、さらに対応に追われる負のループに陥ってしまう。
このような状況に陥らないために、「業務の標準化」「衛星管理状況を把握できる環境づくり」が大切になる。
ここでは、衛生管理を習慣化しながらオペレーションを回すために必要なことを解説する。
クレンリネスを習慣化する
クリンリネスは単純に「掃除」ではないことに注意しよう。クリンリネスに大切なのは、店内の清潔さを継続的に維持すること。そのためには、スタッフ全員が普段から衛生管理に対する意識をもち、習慣化することが重要である。
クリンリネスには、以下のようなものが挙げられる。
・店内やトイレの綺麗さ ・スタッフの身だしなみ ・調理器具や食器、テーブルや椅子などの清潔さ ・外観や店舗周辺の美しさ |
オペレーションマニュアルを確立させる
誰が、どこを、どれくらいの頻度で、どのような作業を行うか、マニュアルにまとめる作業も重要だ。業務内容をマニュアルにまとめれば、新しいスタッフが入った際にも分かりやすく、スムーズに業務に取り組めるようになる。
また、衛生管理のチェックリストを作成することで、誰がどこをいつ掃除するかを把握でき、さらに掃除のし忘れを防げる。
ルーチン業務はフォーマット化して効率化
習慣化してマニュアルの確立までできたルーチン業務は、マニュアルとともにフォーマット化し効率化を進めよう。マニュアルやチェックリストは紙で印刷するところも多い。しかし、以下のような注意点がある。
・チェックの抜け漏れが発生する ・水にぬれてぼろぼろになる ・内容の更新に手間がかかる ・情報を検索するのに時間がかかる ・印刷の手間・コストがかかる ・チェックは付けても実施状況の毎日のチェック・振り返りができていない |
最近では、オペレーションの実施状況をアプリなどで簡単に管理できるツールもある。手軽に漏れなく業務の管理をしたい場合は、店舗運営管理ツールを導入するのがおすすめだ。例えば『V-Manage』であれば、蓄積された記録やデータをもとに、業務や掃除などの実施状況が一目で確認でき、マニュアルやチェックシートを作成できる。店舗は実施内容をタブレットでタッチ入力・提出が簡単にでき、本部や店舗マネージャーはどこにいても店舗運営業況をリアルタイムに確認できる。
衛生管理の徹底でワンランク上の飲食店を目指そう
コロナ禍以降、日本の飲食店ではアルコールの設置が当たり前になり、料理の提供に関しても衛生管理面の捉え方は厳しくなっている。飲食店の衛生状態と利用に関する調査例から見ても、衛生管理はお客様のリピート率に大きく関わることが分かる。つまり、お客様が飲食店に求めるものは、料理の美味しさや接客の良さだけではなくなってきているのだ。
衛生管理は飲食店の大事なサービスの一つである。衛生管理を徹底し、自店舗を人気店に変えよう。