トコジラミとは?
トコジラミとは、南京虫(ナンキンムシ)とも呼ばれる害虫であり、カメムシの仲間である。体長は4.5~5ミリ程度で、丸く、扁平で薄い体型をしている。人や動物の血液を餌とし、3カ月間血を吸わなくても生存ができるほど強い生存力、繁殖力を持っている。刺されると赤い湿疹となり、かゆみが生じる。
トコジラミの特徴
トコジラミは、25℃ほどの暗く狭い場所を好む。夏場のほうが繁殖しやすいが、ホテルや旅館などの宿泊施設では、年中発生の危険性がある。トコジラミはふ化して1カ月ほどで成虫になり、メスは1日当たり5~6個の卵を産み続ける。寿命は1年程度あり、生涯で300~500個産卵するとも言われている。主な繁殖場所には、ベッドの隙間や裏、マットレスの中、カーペットの下、ソファの隙間などが挙げられる。
トコジラミは1960年代ごろまではよく見られていたが、生活環境の改善により被害は減少した。しかし、近年グローバル化が進み、海外からの旅行客や移民が増加したことにより、フランスや韓国など、さまざまな国でトコジラミの被害が見られ社会問題にもなった。日本でもトコジラミの発生件数は増えており、なかには殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」と呼ばれるものも増えている。
トコジラミの発生原因
トコジラミは、羽を持たないため飛んで移動することはない。主に、海外からの旅行客の荷物や輸入品などに紛れ込み、ホテルや旅館などに持ち込まれていると考えられている。また、海外から受け取った荷物や段ボールの隙間にトコジラミが付着しており、そこから広がるケースもある。
トコジラミの相談件数の推移
近年のトコジラミに関する相談件数の推移は、以下の図の通り。
2009年は303件だった相談件数が2022年には2倍の683件となり、増加傾向であることがわかる。
トコジラミによる害とは?
トコジラミは繁殖力が高く、駆除するためには業者への依頼が必要となる。ここでは、トコジラミによる症状の詳細とかかる費用を解説する。
トコジラミによる症状
トコジラミに刺された場合、非常に強いかゆみが生じ、赤くなったり発熱を引き起こしたりすることがある。トコジラミが分泌する唾液に対するアレルギー反応が原因だ。トコジラミが原因のかゆみは1~2週間続くことが多く、掻きすぎにより皮膚が傷つき、細菌感染のリスクが高まる恐れもある。また、かゆみがひどく睡眠障害になったり、うつ病や不安障害などに発展したりという弊害も考えられるため、宿泊施設としても注意が必要だ。
トコジラミ繁殖拡大に必要な対応
トコジラミはその場所が衛生・不衛生にかかわらずどこでも生息できる。さらに、トコジラミには一般的な殺虫剤では効果がないことが多い。
発生・繁殖が確認された場合には、スタッフのみで駆除するのは難しいため、専門業者への依頼が必要となる。さらに、駆除のための薬品を散布してからトコジラミを完全に駆除するには、数日~3週間程度の時間を要する。被害が建物全体にわたる場合は、旅館を一時休業しなければならないため、被害が拡大数前に対処するのが最善だろう。
トコジラミの見つけ方
トコジラミを早期に発見するためのチェックシートは以下の通り。
● ベッドや布団に黒い点(糞)がある
● ソファや椅子の縫い目などに黒い点(糞)がある
● 赤~茶褐色の虫がいる
● かゆみを訴えるお客様がいる
チェックが多いほど、トコジラミが発生している可能性が高いため速やかな対処が必要だ。
トコジラミを駆除する方法
もしトコジラミを見つけた際には、すぐに駆除しなければ増加し続けてしまう。被害を拡大させないためにも迅速な対応が必要だ。駆除する方法には、以下の3つが挙げられる。
● 薬剤で駆除する
● 加熱駆除する
● 専門業者に駆除を依頼する
薬剤で駆除する
トコジラミが発生した場合は、薬剤駆除が有効だ。プロポクスルやメトキサジアゾン成分の入った殺虫剤がトコジラミに効果的である。なお、害虫駆除用のピレスロイド剤は効果がない。
トコジラミを発見した場合の駆除の手順は以下の通り。
- 殺虫剤をトコジラミに数秒噴射する
- 掃除機で吸い取る
- 掃除機からゴミ袋に入れて密閉する
布団や絨毯などに発生した場合の駆除方法は、以下の通り。
- 布団や絨毯などを袋に入れる
- 袋の口を閉じ、すき間から殺虫剤を噴射する
- 袋を密閉して10回ほど振る
- 数分放置し、洗濯する
トコジラミは熱に弱く、50℃×1分で死滅する。高温スチームでの駆除や、熱湯洗濯(約80℃で5分程度)により駆除が可能。ただし、加熱駆除は熱に弱い素材には向かないため、その際は殺虫剤を利用するか専門業者に依頼しよう。
専門業者に駆除を依頼する
トコジラミの発生が広範囲にわたる場合、スタッフだけでの駆除は難しいため専門業者に依頼しよう。専門業者であれば、現地調査を行い、適切な化学薬品や熱処理により駆除してくれる。
業者によっては、再発防止策を提案してくれるところもある。被害を拡大させないためにも、無理に自らで対応はせず、専門業者に駆除を依頼することをおすすめする。
トコジラミを繁殖させないための日頃の対策
トコジラミがいなくとも、もしもの時のために日頃から適切な対応をする必要がある。ここでは、トコジラミの日頃からの対策を解説する。
定期的な清掃と点検
トコジラミが発生し、被害が大きくなると駆除が大変になるため、定期的な清掃と点検が欠かせない。ベッド周りは、トコジラミはもちろん、ホコリも溜まりやすい場所であるため、入念に掃除するよう心がけることが重要だ。
また、リネン類は清潔に保つのはもちろんのこと、洗濯する際にはお湯を使用するなど、繁殖を拡大させない工夫もしよう。
ベッド、机、備品などを移動させない
もしトコジラミがいるベッドや机、備品などを移動させてしまうと、繁殖範囲を広げることになる。ベッドや机などは基本的には移動させず、移動させる際にはトコジラミがいないかや汚れがないかの確認も合わせて行いたい。
賠償が発生する可能性に注意
トコジラミが発生し、お客様に被害を与えた場合は賠償が発生する恐れがある。賠償の例は以下の通り。
● 宿泊費の全額返金
● 代わりの宿泊施設の手配
● 治療費の支払い
● 営業停止や部屋数を減らした営業
トコジラミではないが、ダニが多数発生したことにより、お客様に100カ所以上の虫刺されが生じた事例では、慰謝料10万円を認めたケースもある。被害が口コミで広がってしまうと宿泊客が減少するといった二次被害に繋がる恐れもあるため注意したい。
トコジラミを日頃から増やさないためにも清掃・点検が重要
トコジラミの発生件数は年々増加傾向にある。コロナ禍が落ち着いたこともあり、海外からの旅行客が増え、今後も引き続きトコジラミ発生には注意が必要だ。トコジラミを増やさない・お客様に気持ちよく宿泊してもらうためにも、ベッドリネンやカーペットの清掃・点検を徹底することが重要だ。
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参照:東京都福祉保健局「知っていますか?トコジラミ」