はじめに:夏のフェスと衛生管理の重要性
夏は湿気や気温が高いため、カンピロバクター、ブドウ球菌、ウェルシュ菌など細菌性食中毒の発生件数が増える傾向にある。飲食店が夏のイベントなどで屋台を出店する場合、野外に加えて本部と現場が遠く離れているため、屋内店舗とは違ったポイントで食中毒対策する必要がある。次章から野外での出店に必要な衛生管理の基本を解説する。
衛生管理の基本
食品の取り扱い・保存方法、調理器具の清潔保持
夏は食品が傷みやすいため、保管場所や保存方法に注意しなければならない。また、調理器具も清潔に利用・保管するよう徹底しよう。
食材の保存は冷却装置を用いる
夏の時期は気温が高く風雨も想定されるため、食品を低温で保管できるよう、冷蔵庫やクーラーボックス、冷凍できる設備(ドライアイス)を設置しよう。クーラーボックスを使用する場合は、温度管理に注意が必要だ。温度計を設置し、食品が傷まない温度を維持しよう。また、提供するメニューは傷みにくいものを考えておくとより安心だ。
クーラーボックス内でも食材はフタつき容器やラップを使い、食品別に保存する。また、地面に直接置かないよう、適切な台やシートを設けることも欠かせない。
個人衛生のキーポイント
夏のフェスでは、従業員一人ひとりが衛生管理について理解し、実践していかなければならない。たとえ一人でも気を抜いてしまえば、食中毒を発生させてしまうリスクがあるからだ。ここでは、個人の衛生管理について、詳しく解説する。
手洗い設備の設置と利用促進
手を洗うための給水タンク・手洗い用シンク、石鹸や消毒液などを用意し、手洗い・消毒をこまめに行えるようにしよう。また、消毒液のところに貼り紙をしたり消毒の声がけをしたりして、積極的に手洗い設備を利用してもらうことが大切だ。
定期的な手洗い・消毒の徹底
衛生の基本は手洗いだ。調理の前はもちろん、作業内容が変わるとき・汚れたときなど、こまめに手洗いや消毒をしよう。髪の毛や顔は無意識に触れやすいため、髪はまとめて手袋を着用しよう。特に手指の傷には食中毒の原因菌が潜んでいるため、従業員に手荒れや傷がある場合は手袋を必ず着用させること。トイレの使用後や破れたときなどもこまめに交換しよう。
高熱や下痢などの症状がある従業員は休ませよう。
マスク着用の状況判断
2023年の5月8日から、マスクの着用は個人の判断に委ねられている。感染症予防のため、マスクの着用を義務付けている飲食店もあるだろう。しかし、夏の時期は厨房が異常な暑さになり、熱中症になるリスクが高まる傾向にある。
フェスの規定やその日の気温・忙しさ具合などの状況により、マスク着用の有無を判断しよう。
定期的な清掃とゴミの管理
夏フェスに出店する場合は、こまめに清掃し、ホコリが立たないよう配慮しよう。屋内の場合は、シートを敷いておくと掃除がしやすくなる。屋外の場合は、定期的にブース内・周囲に水を撒いておけば土埃が立ちにくくなる。
虫よけ対策:虫よけ商品の提供と情報の共有
夏には虫も増えるため、虫除け対策も欠かせない。スタッフに虫除けスプレーやシールなどの商品を提供しよう。虫除け用の機器などを使う場合は、使い方の情報を共有しよう。
また、食品が落ちたままになっていたり、食材が入った容器が開いたままになっていたりすると虫が寄ってきやすくなるため、清掃・蓋(ラップ)をするなどの対策も欠かせない。
直射日光を避ける配置と通風・日陰の提供
野外では直射日光が当たらないところで調理できるよう、調理器具やスタッフの配置を考えること。通風できるよう荷物を置きすぎない・簡易的な扇風機を用意するなど工夫することも大切だ。
また、従業員が日陰で休めるよう屋根を設置したスペースを提供できると良い。水分補給にも配慮すべきだ。
消毒液の配置と利用促進、人との距離の確保
店舗には、スタッフはもちろん、お客様も消毒できるよう消毒液を配置しよう。消毒してもらえるよう声がけし、定期的に消毒することが大切だ。
行列ができたときは人との距離が確保できるよう声がけをしたり、会計をキャッシュレス決済でも対応できるようにしたりするなどの対策を行おう。
事前に衛生管理の人材育成を
スタッフへの衛生教育と衛生管理責任者の編成
管理者だけが衛生管理の知識を持っていても意味がない。あらかじめ従業員に衛生教育を実施し、食品取り扱いの基本や衛生管理の重要性を理解させよう。衛生管理の責任者やチームを編成し、トラブル対応や定期的な点検を徹底することも大切だ。
これにより、チーム全体が衛生管理を理解し、適切な対応を行う体制が整いやすくなる。また、イベント出店時だけでなく、日常的な衛生管理もスムーズに行えるようになるだろう。
緊急対応策
夏のフェスでは、食中毒や悪天候などの事態が発生する恐れもある。このような事態が起きた場合の対応策も考慮しておけば、万が一のときにもスムーズに対応できる。
食中毒発生時の対応
お客様の体調不良が食中毒の疑いがある旨の連絡があった場合は、保健所に連絡をしよう。連絡後は、保健所から以下のような質問を受ける。
- 食中毒患者が利用した日時、場所
- 当日の利用者数
- 食中毒が疑われるメニュー・調理工程
- 体調不良のスタッフがいたか
また、調理工程・衛生管理マニュアル、スタッフの検便検査などの資料を求められる。飲食店が提供したメニューが原因で食中毒が発生したと判明した場合、行政指導や行政処分が下されることになる。
被害者の方から損害賠償を請求された場合、示談を行うが、示談が成立しなかった場合、訴訟の対応をしなければならない。食中毒が発生した場合の損害・費用の保証を目的とする保険に入っている場合は、保険の利用が可能だ。これらの流れや対応をマニュアルにまとめておくと良いだろう。
悪天候になった場合の対応
悪天候時はどのような対応をするのかも明確にしておこう。たとえば、雨天、強風時には、料理に虫が入る恐れがある。調理中に虫が入らないよう、ビニールシートで囲う・調理場の周りを囲うなど、対策を考えておこう。また、虫が混入した場合にはどのように対処するのかをしっかり定めておく必要もある。
現場の衛生管理は、管理者のチェックが必須
飲食店がフェスに出店する際には、食中毒や熱中症、虫の混入など気をつけるべきことがたくさんある。離れた場所にいる従業員の手洗いや危機洗浄などの作業進捗を確認するには、オペレーション管理ツール「V-Manage」が有効だ。衛生管理などタスクごとの完了チェックや、本部への報告が可能。タスクを見れば、「いつ」「何を」するのかがチェックでき、マニュアルを紐づけできるため、従業員は業務のやり方も把握できる。衛生管理やタスク管理に困っているなら、このようなツールを利用してはいかがだろうか。