きっかけは大手小売店バイヤーからの提案
南都酒造所はハブ酒を主力商品とするメーカーとして、1992年に創業した。工場長の我那覇氏によると、当初から既存のハブ酒との差別化をはかり、“飲みやすい味”を目指してきたという。
「昔からあるハブ酒は、お酒の味を楽しむというより薬として使われていました。強烈なにおいがあるものがほとんどなので、一度飲んだら二度と飲みたくないといわれることもあります。しかし、ハブの臭みは下処理をしっかりすることで、取り除くことができるんです」
生きたハブをそのまま泡盛などに漬け込む作り方では、たとえ内蔵の摘出処理をしていても爬虫類特有のにおいで、臭いハブ酒になってしまう。
南都酒造所では、ハブを鮮度がいい状態で血抜きし、内臓を摘出するだけでなく、臭腺という強い臭いを出す小さな器官まで除去している。この特殊処理で、臭みはほとんど消え、味に決定的な違いが出るのだ。
処理後に59度のアルコールで長期貯蔵熟成してハブエキスを抽出する過程で、ハブ毒は無毒化される。ナツメやクコといった、13種類の漢方ハーブを浸した泡盛とハブエキスをブレンドし、さらに熟成させると、他にないブランデーのような香り高く美味しいハブ酒になる。
「当社のハブ酒はアルコール度数が35度(一部商品は25度)あり、飲み方はロックや水割り、お湯割りが一般的です。展示会では炭酸で割って試飲していだたくこともしています。ある展示会で、それを飲んだバイヤーさんから“わざわざ割るより、最初から缶入りの炭酸アルコール飲料にして売ったらどうか”と言っていただいたのが、ハブボール開発のきっかけでした」
ハブ酒の缶入り飲料を提案したのは、高級食品スーパーなどを全国展開する大手小売のバイヤーだった。商品化すればまとめて仕入れてもらう商談を取りつけ、すぐさま試作に取り掛かったという。