居酒屋、老健施設、自治体、給食事業者などに食品を配送
【Q】伊勢市と鈴鹿市に拠点がありますね。

中北征史氏
執行役員 営業本部 統括本部長 中北征史氏:当社は1962年創業の酒類卸でした。20数年ほど前からお取引先様のご要望もあり食品や厨房周りの日用品も取り扱いはじめ、現在は生鮮三品を除いた酒類、食品、日用品を揃えています。主なお取引先様は居酒屋さんをはじめとした飲食店が8割ほどで、その他にはホテル、市町村などの自治体、学校、老健施設、企業給食の事業者などになります。
配送エリアは、本社の石九が伊勢市を拠点に県南、グループ会社のヒグチ石九が鈴鹿市を拠点に県北を担当して、あわせて県全域をカバーしています。
石九のある伊勢市には伊勢神宮があります。お伊勢参りの寄り道になるおかげ横丁では、6~7割の飲食店様と取引があります。また、ヒグチ石九のある鈴鹿市では自動車関連の企業やイベントが多いことから、景品や販促品などの注文も受けています。長くお付き合いいただいているお取引先様が多く、関係性の維持を重視しています。
受発注システム導入の経緯
【Q】2022年8月に受発注システムを導入されました。経緯を教えてください。

田中亜紀氏:受注の多くはFAXや電話、留守番電話で受け付けていました。本社の石九ではFAXが平日は50件、週末には100件を超えます。さらに留守電の注文も毎日60件あり、これを4人で1時間ほどかけて処理するのです。ヒグチ石九では私1人のため1時間以上は受注作業に時間を取られていました。
毎朝、出社してからが大忙しで、1便の出荷に間に合えばいいのですが、一部は2便、3便に回ってしまうこともありました。
FAX注文は手書きですから、品名があやふやなことが多くあります。「樽」とだけ書いてあるのでビールを持っていくとチューハイだった、なんてこともあり再配達もしょっちゅうでした。
取引先に注文内容を確認しようにも、多くが居酒屋です。我々は朝から夕方まで、居酒屋さんは夕方から夜中までと時間帯が違うので連絡が取れないのです。
専務取締役 嶋田拓磨氏(以下、嶋田専務):こうした卸業界共通の問題に頭を痛めていて、いろんな受発注システムを探したのです。メールで受発注するもの、他のシステムと一緒になっているもの、あらゆるシステム、サービスを調べました。
業界大手の同業者にもいろいろ話を聞きました。そのなかで「いまはLINEを使う受発注が一番便利」という助言をいただいたのです。確かにPCやスマホ専用アプリの操作には不慣れなご年輩のお取引先様が多くいます。そのなかでLINEは、小学生から60~70代まで、多くの方が利用しているツールです。当社のお取引先様でもLINEならできるという感触を得ました。それで『TANOMU』に行き着いたのです。
受発注の他にも、将来性も考えました。例えば当社の基幹システムとCSVデータ連携できること、販促情報を送信して営業にも使えるといった機能も重要です。特に販促機能の期待は大きかったです。
「新しい商品が出ました」というセールスや「台風が来たので本日は休業します」といった内容を取引先に知らせるにも、お取引先様と当社の業務時間がずれているため、配達の際に紙を置いていくしかありません。しかし紙のご案内は、大部分が捨てられてしまいます。一過性のものですし、記憶にとどめている人も多くありません。
また、営業のやり方もムラがあったのです。積極的にチラシを持参するお店もあれば、遠方や配送頻度の面から持って行きにくいお店もありました。配布先に公平性が保てなかったのも課題だったのです。
こうした課題を解決できて、いつも目にすることができて、押しつけがましくなく、だれにでも配信できるツールを欲していました。その点でも『TANOMU』は当社のニーズにぴったり合っていたのです。
導入時の反省を生かした、成功する導入法
【Q】導入後、取引先の発注方法の切り替えはスムーズにいきましたか?
嶋田専務:最初は2~3年掛けてゆっくりと確実に浸透していけばいいと考えていたのです。2022年8月に導入して、実際にお取引先様に『TANOMU』への発注切り替えをお願いしたのはその年の暮れくらいからでした。
抵抗されると思っていましたが、「思ったより簡単」という声があがっていました。FAXや留守番電話が手間と考えていたお取引先様が少なくなかったようで、全顧客の40~50%まではスムーズに理解していただけました。
現在は、電話やFAXから『TANOMU』に切り替えていただいたお取引先様は、本社で7割ほど。少し遅れて導入したヒグチ石九でも6割を超えたところです。
おかげさまで本社のFAXは1日100件から10件程度まで削減され、留守電も60件から20件程度にまで減りました。ヒグチのほうでも、体感的に同じように受注作業が減った印象です。
田中氏:本社の石九が先に『TANOMU』を導入してからお取引先様に説明にいく際、いろいろな反省点が挙がりました。例えば、取引先に便利な機能をあれもこれも説明していました。しかし、6000を超える商品をスマホ画面で全部見せたところで、お取引先様には不要な情報です。本店での導入の反省として、最初に億劫に感じられてしまうのが一番の弊害だと気づきました。
そのため、あとから導入したヒグチ石九では情報を絞り込んだのです。まず当社で、お取引先様が日頃から注文する品物だけを登録して、「この中から商品をお選びください。他のページは見なくても結構です」と案内しています。
そのうち先方から「他の商品も注文したい」とか「何か他にいい商品はないの」というお声をいただいてから、「実はですね…」と便利機能を紹介していくことにしています。販促情報も、こちらはただ掲載するだけ。探すのは先方に任せるという方針で進めています。おかげで滑り出しは順調でした。
ITを活用した今後の展望
【Q】今後どのように展開していきますか。
嶋田専務:今後は『TANOMU』の販促機能でどんな情報をどう伝えていくか、配信イコール営業という視点で利用したいと考えています。配信機能を使うことで、これまでのように特定のお取引先様しかご案内できないという不公平がなくなります。また、従業員のスキルの違いで差が出ていた顧客対応も均一化できます。つまり、新人でも情報提供を上手に発信することで、ベテランの営業担当に並ぶ成果を挙げることもできます。
ただし、ITツールを導入しても、結局のところ最後はヒト対ヒトの関係がモノをいうわけです。その視点も合わせて、顧客関係を深めていきたいと思います。
株式会社石九
本社所在地:三重県伊勢市神田久志本町1328-3
設立: 1970年8月
事業内容:業務用酒類・食品総合卸
公式ホームページ: https://isk-1493.com/