調理法や素材にとことんこだわった「鍋焼きうどん」
キンレイの「お水がいらない」シリーズは、うどんやラーメン各8品ずつを展開している。いずれもスープ、麺、具材が重なった三層構造で、水が不要の調理だ。スープと麺を別々に凍らせることで、加熱後の麺がコシのある状態で茹で上がる。
「『お水がいらない』の前進は、1978年からコンビニ向けに販売していたアルミ容器入りの冷凍鍋焼きうどんです。これをスーパー向けに販売するため、2006年に製法をそのままにして容器のない袋麺『料亭の匠』を売り出しました」
『料亭の匠』は有頭海老や鶏肉など9種類の具材を入れ、コンビニ商品よりも高級路線で展開。1袋500円前後で販売した。こだわりの素材や味で自信の持てる商品だったが、年間出荷数はわずか1万食ほどで不振に終わったという。
「当時、一般的なスーパーでは高級な冷凍食品のニーズがなく、ほとんど取り扱っていただけませんでした。市場を理解せずに、“良いものを提案すれば売れるはずだ”と過信していたんですね。高級スーパーや百貨店であれば違ったかもしれませんが、そういった販路の開拓もできていませんでした」
素材から簡便性へと、訴求内容を変更
『料亭の匠』は消費者の手に届くどころか、店舗のバイヤーを納得させることさえできなかった。このままでは終売となる危機が迫り、2008年に商品の価格やパッケージを見直すことにした。
「高級感を残しつつ具材を変更し、300円台というお求めやすい価格に設定しました。またストレートスープにこだわりがあるので、商品パッケージに“だし香る”というキャッチコピーを入れたのですが、お客様には伝わらなかったですね。商品を手に取っていただけませんでした」