出荷数は年間10万食を超えたものの、まだまだ危機回避とはいえない。そこで打ち出した新たな一手は、訴求ポイントの変更だった。
「これまで強調し続けてきた素材のこだわりを控え、消費者が冷凍食品に求める“簡便性”をアピールしていくことにしたのです。2009年『お鍋に入れるだけ おうちで簡単!』というシリーズ名にして発売すると、年間50万食まで伸ばしました」
これを受けて翌2010年、“お水がいらない”をキャッチコピーにしてパッケージを刷新。わかりやすくインパクトのあるネーミングの効果で、出荷数を100万食近くまで増やしていった。
「消費者への説明で、 “ストレートスープなので、お水を入れなくていいんですよ”としていたんです。そこから、スーパーのバイヤーさんたちも“お水がいらないやつでしょ”と覚えていただけるようになりました。また、“なんでお水がいらないの?”と興味を持ってくださる方も多かったので、そのままキャッチコピーにしたのです」
素材と品質にこだわってきた同社にとって、“簡便性”をアピールすることは不本意だったというが、その後も順調に売上を伸ばし、2012年には出荷数500万食を上回る。これで勢いに乗ったかと思ったのも束の間、翌年には頭打ちとなってしまった。
知名度の低い関東ではラーメンで勝負
売上が伸び悩んでいた当時の課題は2つ。鍋焼きうどんが寒い時期にしか売れないことと、関東エリアでは鍋焼きうどんの認知度が低かったことだ。
「関西では売れていたのですが、関東ではまったく売れなかったんです。関西で鍋焼きうどんといえば、専門店で食べる高価なメニューです。しかし関東では文化の違いか、家庭でお手軽に食べる煮込みうどんをイメージされる方もいらっしゃいます。春や夏の時期も、関東でも売れるにはどうすればいいかと考え、“お水がいらない”シリーズでラーメンを出すことで勝負に出ました」