「バイキング(ブッフェ)は、全館で需要のあるベーコン、スクランブルエッグなど、数種類の料理以外は、固定のメニューを設けていません。連泊されるお客様もいらっしゃるので、前日と完全に同じメニュー構成にならないように、気をつけています。また、各館の料理長の裁量で地元の食材を仕入れ、季節に合わせたメニューの改変を行っています。そのためどの施設に行っても、毎回違う料理を楽しむことができるのです」(白崎氏)
固定メニューがないというのは、宿泊客からすれば嬉しいが、一方で食の安全・安心管理においては、メニューのアレルゲンなどの情報が把握できなくなるのではないだろうか。
現場の負担を軽くし、本部が主体的にサポートできる体制づくり
大江戸温泉物語で1年間に使用される食材は、1万品以上。以前は各料理長がメニューを考案する段階で、取引先から電話やFAXを駆使して、商品の情報を集め、アレルギーの一覧表を作成していた。しかしそのアレルギーチェックだけで、年間3,300時間を要したという。
この時、同社がメーカーから集めた商品情報は、通称『商品規格書』と呼ばれる。商品の情報や、アレルギー情報、原産国、栄養成分などをひとつにまとめられた、まさに食品の設計書だ。
各施設の料理長は、この紙の商品規格書や商品の裏側の表示を見ながら、メニューに含まれるアレルギーの一覧表を作成し、調理場の壁に貼り出していた。しかし徐々に、素早いメニュー改廃速度に追いつかなくなっていったという。
「エクセルなどでアレルギー一覧表を作成するのは、すでに限界でした。しかも商品自体にリニューアルがあった場合、その商品情報の変更が、アレルギー一覧に反映されない可能性もあります。また当時は調理場内のコンタミ(混入)のリスクも考えられていない状態だったため、食の安全管理をまとめてなんとかしなければならないという声が、現場からも上がってきていたのです」(白崎氏)
そこで同社が導入したのが、インフォマートの「BtoBプラットフォーム規格書」による商品規格書のシステム管理だった。紙やエクセルによる管理から、システムによるデータ管理に移行したことで、商品の改定やメニューの改変が瞬時に現場に伝わり、アレルギーの一覧表の更新速度も向上していった。
さらに、地方の宿泊施設を持つ、大江戸温泉物語特有の課題もあったという。