例えば、刺身に付けて食べる場合。粉しょうゆをつけた刺身を口に入れると、魚の味を感じた後に醤油の風味が舌のあちこちで広がる。
「まず食材の味が来て、後から醤油が追いかけてくる感じです。普通の醤油だと、舌の上で醤油の味が広がっていくじゃないですか。でも粉しょうゆは、唾液(水分)に触れた時点で初めて味が出るので、舌全体ではなく触れた部分のピンポイントで醤油の味がします。舌の上に食材の味が広がる中、点で醤油の味を感じさせてくれるわけです」
商品開発では、目新しさや使い勝手に注力するあまり、商品そのものが持つ力を見過ごしたモノづくりで失敗に追い込まれるケースも少なくない。そんな中、明石さんは粉しょうゆの力をしっかりと見据えた上で、昔からある醤油という食材に新しい価値を生み出している。
「斬新さって何だろうってよく考えるんですけど…。染み付いた固定観念を空っぽにして、他の人が作らないようなものを作ってみたいという思いも確かにあります。ただ、なぜそうするのか、そうすることにどんな意味があるのかが自分の中に無ければ意味がないと思うんです。そんな考え方を仲間と共有しながら、新しいモノづくりに挑戦したいですね」
これまでにも、お店で提供する料理だけでなく様々な新商品を世に送り出してきた下鴨茶寮。近々、最新の冷凍技術を使った新商品も発売されるという。老舗の看板に甘んじることのない進取の気性と、商品の本質を見極めて真摯に向き合う姿勢。そこから生まれるヒット商品は、一過性のブームで終わらない力を持っているはずだ。
株式会社下鴨茶寮
住所:〒606-0801 京都市左京区下鴨宮河町62
電話:075-692-2001(通販営業部)
事業内容:茶懐石、京料理、京懐石、高級食品、贈答品の製造・販売
公式HP:http://www.shimogamosaryo.co.jp/
お話:料亭部 調理長 明石尚宏さん