「調合までは完成させられたんですが、そこから先は専門メーカーさんにお願いするしかありませんでした。伯父が大手メーカーに勤めていたので相談したんですが、即答で『無理!』でしたね(笑)。味云々の話以前に、ロットが合わないんです」
『料亭の粉しょうゆ』に使われている醤油は、250年の歴史を誇る香川の老舗・かめびし屋の3年醸造もの。希少な醤油を原材料としている商品だけに、メーカーが希望するロットに見合う量を生産することは不可能だった。
「それこそ片っ端からメーカーさんを当たりましたが、なかなか相手にしてもらえませんでした。ようやく量の問題で折り合いがついたと思ったら、味が上手くいかなかったり…。何回も試作を重ねる中で、味はもちろん仕上がりのイメージや想いを伝えて共有しながら信頼関係を築き上げていくしかなかったです」
試行錯誤の末、一年半の歳月をかけて完成させた粉しょうゆは、2013年頃から下鴨茶寮でお刺身の醤油や揚げ物の塩代わりとして提供された。すると、「知人へのお土産にしたい」「家でも使いたい」といった声が多く寄せられる。
そのリクエストに応える形で、2014年7月に『料亭の粉しょうゆ』として京都限定で販売。10月末には、パリで行われたコンクールにおいて、ショコラティエの小山進氏が『料亭の粉しょうゆ』を使ったショコラを含む4種のショコラを出品して最高位の「ゴールド・タブレット+☆」を獲得。パウダー食材の逸品として注目を集めることとなる。
醤油のデメリットを解消した味と使い勝手の良い形態
そして、2015年1月から本格的に販売を開始すると、料亭やデパ地下の直営店での販売に加え、オンラインショップを通じて人気が拡大していく。最近では、京都の観光地にあるショップからの引き合いも多いという。