100年以上の歴史を持つ京都の老舗パン屋
京都のみならず全国にファンをもつ老舗ベーカリー・進々堂の創業は、1913(大正2)年。今や京都は国内トップのパン消費量を誇り、名店が建ち並んでいるが、当時のパン事情は惨憺たるもので、ホテルやレストランは神戸から良質なパンを取り寄せていたという。
そんな状況を打開するため、創業者の続木斉氏は大正13年(1924)に日本人初のパン留学生として渡仏。本場の味と技術を京都へ持ち帰り、本格的な国産フランスパンを根付かせる。以来、創業者のパンに対する熱い思いを受け継ぎながら、100余年もの歴史を重ねてきた。現在では、市内12ヶ所の直営店での販売をはじめ、ホテルやレストランなどに向けた業務用商品も幅広く手がけている。
そんな進々堂の商品の中で、2011年の登場から全国レベルでジワジワと広まりをみせているのが、焼成後に冷凍して届けられる業務用のパンだ。
「オーブンで5分ほどリベイクすれば焼きたての味を再現できる商品として、ホテルやレストラン、カフェなどの取引先様から好評をいただいています。ヒット商品と呼ばれるにはまだまだ恐れ多いのですが(笑)」
そう謙遜しながらも、西川さんの表情と言葉からは商品に対する熱い思いと自信が伝わってくる。京都の老舗ベーカリーが手がける業務用冷凍パンには、どのようなストーリーが隠されているのだろうか。
誕生のきっかけは、ホテルシェフのリクエストから
「冷凍パンを出すずっと以前から、京都や滋賀、そして大阪の一部地域にあるホテルや飲食店さんへ業務用パンを届ける自社配送便は持っていました。長年愛用いただいている所が多く、自社配送のキャパに限度があったので、さらに大きく広げようとは考えていなかったはずです」
手の届く範囲の自社配送で、実績と信頼を重ねてきた業務用パン。冷凍パンの誕生には、この進々堂のパンに厚い信頼を寄せるシェフが鍵を握っていた。
かつて、ウエスティン都ホテル京都の総料理長として、天皇・皇后両陛下をはじめ各国VIPの晩餐会を担当した名シェフ、水野佳男さんだ。