シェフ同士の口コミが追い風に
試行錯誤を経て名シェフの期待に応えた冷凍パンだったが、そこから一気に広まっていったというわけではない。
「初めの頃はクロワッサンとバゲットだけとか売上的には本当に微々たるもので、多くても月間100万円ほど。100万円といえば当社の大型直営店なら1日分の売り上げです(笑)。それなのに、わざわざ梱包して宅配便を呼んで細々とやっていました。長年お世話になってきた水野シェフへの恩返しにやっていたようなもので、会社としても新たな業務用商品として展開する考えはありませんでした」
そんな状況が2年ほど続く中、少しずつ問い合わせが増えていったという。積極的に売り込むことのなかった商品が、ジワジワと口コミで広がり始めたのだ。その源は、やはり水野シェフだった。
「多くのお弟子さんをはじめホテル界で幅広い人脈をもつ水野シェフが、うちの冷凍パンを紹介して下さっていたんです。そこから、社を挙げて本格的に取り組み始めました」
紹介されたホテルへ足を運んだり、司厨士協会の賛助会員になったりと、冷凍しても変わらない進々堂の味を積極的に広めていった。
「いろんなご縁が元で納品先が増えていくうちに、儲かるか儲からないかよりも自分たちのパンを認めてもらえる喜びに目覚めたんですね。そんな感じで少しずつ増やしているというのが現状です」
そんな地道な活動が実を結び、納品先は北海道から九州にまで広がった。多くて月間100万円程度だった売上も、現在では月間800万円近くまで伸びてきているという。