卸・メーカー2013.12.10

ハムソー業界のヒット“メーカー”に聞いた商品開発の裏側~信州ハム 中村幸男社長

2013.12.10

地方の中小メーカーもよい商品をたくさん作っている。そんな言葉がぴったりな企業が、長野県上田市にあります。化学合成添加物を使用しない「グリーンマーク」や、JAS熟成規格の製法で作られた高級ライン「爽やか信州軽井沢」シリーズなど、ハム・ソーセージの様々なヒット商品を生んできた、信州ハム株式会社です。

「中小メーカー」とはいうものの、従業員は500名以上。売上高200億円規模に成長した同社を導くのは、創業家以外で初めて生え抜きの社長として6年前に就任した中村幸男社長です。ヒット商品は、どうすれば生まれるのか?そのヒントを探りました。

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地方の中小メーカーもよい商品をたくさん作っている。そんな言葉がぴったりな企業が、長野県上田市にあります。化学合成添加物を使用しない「グリーンマーク」や、JAS熟成規格の製法で作られた高級ライン「爽やか信州軽井沢」シリーズなど、ハム・ソーセージの様々なヒット商品を生んできた、信州ハム株式会社です。

「中小メーカー」とはいうものの、従業員は500名以上。売上高200億円規模に成長した同社を導くのは、創業家以外で初めて生え抜きの社長として6年前に就任した中村幸男社長です。ヒット商品は、どうすれば生まれるのか?そのヒントを探りました。

目次

信州ハム一筋43年。現場を知り尽くして社長へ

-●御社の歴史を教えていただけますか。
もともとは創業者の久保角太郎が、1941年頃からうさぎや山羊など の革を軍隊に納品していたことにはじまります。革をとったあとにはお肉が残りますから、それを腐らないように塩づけして、当時の日本ハムさんや伊藤ハムさんに販売していました。自社でハムやソーセージなどの食肉加工品を作り始めたのは戦後になってからです。

-●中村社長のご経歴を教えてください。
私 は東京生まれの長野育ちで、上田の高校を出たあと、東京の大学に進学しました。こう見えて昔は文学少年で、卒業後は出版社に就職が決まっていたんです。しかし、うちは片親だったんですが、母親の体調がよくなかったので、面倒をみるために長野に戻って就職することにしたんです。それで、母親を養うために、当 時一番お給料の高かった会社を選んだのです。それが信州ハムでした。以来40年以上、信州ハムにおりますが、営業からはじまり、生産・企画・広告宣伝・経営企画・総務と、社内のほとんどの仕事をやりました。そして2006年に社長に就任いたしました。

-●ハムソー業界全体をみると、売上は近年あがっていますね。
そうですね。売上げは悪くないです。ハムやソーセージを食べられる方のベースが伸びているということでしょう。最近は若い方の中でお中元やお歳暮といったギフトの習慣がなくなっているといわれていますが、ハムやソーセージに関しては、日常的にスーパーで買っていただくようになったということだと思います。歓 迎すべきことですよね。ただ、どこの業界もそうだと思いますが、デフレの影響で利益率はとても低くなっています。純利益はだいたい1%から1.5%と言われていますから。弊社は差別化商品がメインなので、まだ価格競争には巻き込まれていないほうだと思います。

グリーンマーク開発のきっかけは、消費者の声

-●差別化といえば、化学合成添加物を一切使っていない「グリーンマーク」シリーズの開発のきっかけはあったのでしょうか?
昔、ハムを作るときに使っている発色剤に発がん性がある、と騒がれた時代があるのはご存知ですか?そのときに主婦連(主婦連合会。エプロンとしゃもじをシンボルに、戦後日本の消費者運動のさきがけとなった)の方々が、「子供に食べさせるのがおそろしいから、添加物を使わないハムを作って欲しい」と大手のメーカーさんにもちかけたのです。しかし、発色剤は菌を抑える効果もありますし、世界的にも発色剤を肉に添加して発色・熟成させ、フレーバーを出してはじめて「ハム」になるというのが常識でした。当然大手さんには断られ、中小の弊社に話がもちこまれたのです。そのとき当時の社長で現会長の久保忠夫が「やってみよう」と決断し、化学合成添加物を一切使わないハム・ソーセージを作りはじめることになりました。ただ、無添加のハムは日持ちしないため、当初は流通させないで直接主婦連の方々に納品していたんです。団体の人が喜んでくれているのを見た会長が、「スーパーでも売れるようなものつくろう」といい、1975年に誕生したのが「グリーンマーク」シリーズです。

-●1975年というと、今ほど食の安心・安全は騒がれていませんよね?
そうですね。まだまだ消費者の意識が低い時代ですから、「グリーンマーク」はすぐには売れませんでした。しかし、少しずつですが確実にお客様がついてくださって、今では多くのスーパーさんで扱ってくださっています。「グリーンマーク」だけはこちらから売り込まなくても、お取引先から扱わせて欲しいといわれる商品になりました。化学合成添加物を使わない商品では、ほぼ独占状態かもしれません。

-●しかし、今では大手メーカーでも似たような商品を出されているのでは?
いろんなメーカーさんが、化学合成添加物を使わない商品を出してこられましたが、すぐにやめてしまうんですよ。なかなか売れないので我慢しきれず、アイテムカットにかかってしまうんです。添加物を入れないということは、手間と時間もかかります。衛生管理を極限まで高めないと、途中で雑菌がついてしまう恐れがありますので、技術的にもめんどうなんです。弊社も発売当初は返品率が高くて、営業から「この商品はもうやめてくれ」というような声が出ました。しかし、会長が「3年我慢しろ。おれが経営してるんだから、お前たちに苦労かけないよ」と言ったのを今でも覚えています。

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