地元に根付いた炊飯事業を展開
-●御社のあゆみをお教えください。
元々、静岡富士市で給食会社(組合)を立ち上げた父と、熱海でデザイナー をしていた母が結婚し、1972年に炊飯事業を拡大して、その名の通り、ごはんに特化した会社として伊豆で一番になろうという思いから、伊豆ライスセンターとして設立しました。その後、両親が他界し、2001年より私が事業を継ぎました。
-●炊飯事業に力を入れたきっかけは?
富士市で給食会社(組合)を立ち上げた父には当時、「大量の米を、おいしく炊く」という技術がありませんでした。そのため、お客様から大口注文をいただいて も、さばききれなかったんです。そこで父は、炊飯器の修理をお願いしていた電機業者さんへ相談したそうです。試行錯誤しながらも、父と電機業者さんは、 1969年に効率よく大量にごはんを炊ける、連続式炊飯を開発しました。この連続式炊飯器の3号機を購入した母に、ライスセンター(炊飯業)を始めないかと父が提案し、母が三島市で炊飯業をスタートさせることになったそうです。
-●連続式炊飯とはどういった炊飯方法なのですか?
連続式炊飯というのは、加熱するガスバーナーの上にレールを敷き、そのレールの上に米釜を走らせることで、大量炊飯ができる炊飯方法です。釜を一個一個火にかけ炊いていく手間が省けるので、今では多くの炊飯業者が取り入れています。
-●冷凍技術にも長けていらっしゃいますが、冷凍商品の開発をされたきっかけをお教えください。
ちょ うど1993年頃、当時、中国やタイなどの海外の原料を使用して、現地の工場で安く製造した冷凍の握り寿司を、輸入しようとした国内の食品業者がいらっしゃいました。その企業は、業界でも有名になり、さらにメディアでも大きく取り上げられました。冷凍握り寿司のニーズを意識して、弊社でも技術をさらにきわめて、海外ではなく自社で製造できるようにしたいと考えたんです。ちょうど設立から20年という時間が経っていたこともあり、炊飯とお米に対してのノウハウは社内でかなり蓄積されていましたし、当時最新の冷凍技術が搭載された冷凍庫、3Dフリーザーも導入していたので、必ず成功できると信じていました。
-●冷凍とは思えないほどもちもちだと評判ですね。
それは、酢飯だから自然解凍しても、この食感が出せるんです。通常の白いごはんをそのまま冷凍すると、冷凍やけしたり、パサパサになることも多いですよね。これは、冷凍することで炊飯してアルファ化され粘度を持った、ごはんの水分が蒸発してしまっているからなんです。
でも、酢飯であれば、ごはんに混ぜている寿司酢に糖分が含まれていることで、冷凍しても水分の蒸発量を防ぐことができるようになります。この作用を上手に利用して、あとは炊飯する際の水分量を何百回と試す実験を繰り返し、解凍後の酢飯の粘度のデータを徹底的に調べました。
また、ごはんとあわせる寿司酢の量や砂糖の分量にもこだわり開発していきました。