卸・メーカー2013.12.10

ハムソー業界のヒット“メーカー”に聞いた商品開発の裏側~信州ハム 中村幸男社長

2013.12.10

-●「爽やか信州軽井沢」シリーズも差別化商品ですね。
軽井沢シリーズは、今から32年前に現場のアイデアで生まれた商品で、原料や製造方法にこだわった高級ラインです。ご存知かもしれませんが、日本のハム・ソーセージは、プレスハムや魚肉ソーセージといった、いわゆるヨーロッパスタイルとは違う製法や原料で作られた独特な商品があります。これは肉が大変高い時代のまさに苦肉の商品で、日本人の知恵を生かした素晴らしい商品ではありますが、やはり本場ドイツの商品とは違いがあります。

軽井沢シリーズでは、本場ドイツの伝統的な味に近づけるため、味付けを工夫したり、原料を厳選したり、水分量を減らしています。したがって、どうしても価格は高めになりますが、素材のうまみが凝縮された本当においしい商品ができるのです。そのこだわりが伝わるよう、名前も他社と差別化したいと考えまして、信州らしい地名をつけました。今では地名の入った商品がたくさんありますが、ハムソーの商品で商品名に地名をつけたのはうちが初めてだと思います。

-●最近では、「つるし燻りベーコン」もヒットしました。
一昨年のヒット商品ですね。通常、ベーコンは大きな豚バラ肉1枚を燻製しますが、それをカットして販売するため、スモークがかかっていない面がでてきます。そこで、「つるし燻りベーコン」では、豚バラ肉を適度な大きさにカットしてからつるしてスモークすることで、製品全体にスモークをかけることに成功しました。実際に消費者の方が食べられるときに、今までのベーコンよりもスモークの豊かな香りをお楽しみいただけます。

女性だけの商品開発室。トップといえど口は出さない。

-●様々なヒット商品がありますが、商品開発力の高さはどこからくるとお考えですか?
いやいや、売れなかった商品もごまんとありますよ。ただ、私は失敗は忘れるようにしています。あとは、昔から若い人間のアイデアをかたちにする土壌があったというのは大きいかもしれません。やる気さえあれば、なんでも挑戦できる環境だと思います。あと、昨年からは女性ばかりの研究開発部隊を作って、商品開発をしています。研究開発のリーダーももちろん女性です。スーパーで買い物をされるのは、ほとんど女性ですよね。女性は値段も品質も使い勝手も考えながら商品を選びます。「消費者目線」を考えたら、スーパーに行かない男たちが商品開発なんてできっこないじゃないかと。私もほとんど口は出しませんよ。男が口を出したらろくなことはありませんからね(笑)。

-●今後の展望や取り組みたいことをお聞かせいただけますか。
売上げ云々よりも、従業員が「あぁ、信州ハムにいてよかったな」って思う会社にしていきたいというのが一番ですね。本人もそうですが、家族にも「お父さん、お母さんが信州ハムで働いていてよかったな」って言われるような会社にしたい。私が大学を卒業した頃は求人難で、若者の就職口がたくさんある時代でした。私は将来性を見たときに、ハムソー業界が一番魅力があるのではないかと考えていましたが、一般的にはハムソー業界は就職口としてはあまり人気は高くありませんでした。当時の信州ハムの給料が地域で一番高かったのも、給料を高くしないと人が集まらなかったからだと思います。ですから、今は給料はもちろん、福祉面も環境面をもっとよくして、いろいろな意味で人にうらやましがられる会社にしたいと思っております。一番はやっぱり給与面ですね。自分たちで稼いだものを自分たちに還元できる。そんな夢のある会社にしたいと考えています。

-●最後に、座右の銘を教えていただけますか。
いつも意識しているのは、経営理念の中にある「よりよい品を、より安く、より衛生的に」という言葉です。正直言うと若いときはバカにしていたんですが、経営者になって「これはすごいな」と思いました。極めて簡単な言葉だけど、ものすごく意味が深いんです。実際に「“よりよい品”ってどんなもの?」と聞かれたら答えられますか?しかも、そのあとに“より安く“”となっている。よい品を作るには原料の質を下げてはいけませんし、“衛生的に”するには、手間や時間もかかります。考えれば考えるほど、いろんな意味が含まれていて、あらためて、これは本当に精魂こめて作っていかないといけないな、と気付かされます。

あと、若い者には、「よりよい品を、より安く、より衛生的に」のあとには、「作る」という言葉がくるんだよと教えています。「売る」のではなく「作る」。そういうものを作っていれば、自然と売れるんだ、ということですね。メーカーとしてはこれ以上の言葉はないんじゃないかと思います。これからも「よりよい品を、より安く、より衛生的に」作っていきたいですよね。

信州ハム株式会社

お話:代表取締役 中村幸男様
企業所在地:〒386-8686 長野県上田市下塩尻950 
電話:0268-26-8686
事業内容:ハム・ソーセージの製造・販売

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