コロナ禍でも強いうなぎ業態。あえて駅近物件を選ばない理由とは
【Q】1号店のオープンが22年秋。コロナ禍での開業に不安はありませんでしたか?
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梅1,600円、竹2,200円、松2,600円
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社 代表取締役 山本 昌弘氏(以下同):新型コロナウイルスの影響は、ほぼ考えませんでした。というのもコロナ禍で厳しいといわれていたのは、お酒を扱う居酒屋業態が中心です。うな重であればお酒は関係ありませんし、うなぎ業態は『今日はうな重が食べたい』という目的来店の業態なので勝算がありました。
ここ数年で流行ったフルーツ大福、高級食パン、タピオカなどはいずれも、お店自体というよりその商材自体がブームになったものです。結果的に多くのブランドが立ち上がり、飽和状態になって消費者が飽きてしまいました。一方でうなぎは国民食のようなものですから流行り廃りがありません。コロナ禍で居抜き物件が多く出ていたことも、開業のきっかけになりました。
【Q】1号店は横浜駅から徒歩約10~15分という立地ですね。
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インキュベーション株式会社
代表取締役社長 山本 昌弘 氏
開業当初はいきなりFC展開までは考えず、まずは自分で1店舗目を成功させようと考えていました。1号店は、駅から徒歩15分はかかる商店街の一角です。通常であれば立地にこだわると思いますが、うなぎ業態なら少々立地が悪くてもインターネットやSNSで検索して来店していただけるはず。
ということは、あえて駅から離れた二等立地、三等立地に出店して固定費を下げ、その分価格を下げたほうが商売として成立するのではないか。このような戦略で、駅徒歩15分、当時はビルの外壁工事中で足場が組んであるような状態でしたが、出店を決めたのです。
1号店の物件はもともと東日本大震災の復興支援でスタートした居酒屋があり、コロナ禍で経営不振に陥っていたためスタッフごと引き受けました。内装はすべてDIYで、ホームセンターで調達した資材で仕上げています。これだけハンディがあっても成功させれば、FC展開の際にオーナーが「自分でもできる」と思ってもいただけるでしょう。だからこそあえてハードルの高いチャレンジを試みたのです。
オリジナルの調理機器で職人レスを実現
【Q】調理オペレーションはどのようにしていますか?
職人に頼らなくても、美味しいうな重を提供できるオペレーションを確立しました。うなぎは商社から冷凍かつ開いた状態で仕入れており、店舗では蒸して焼くだけです。誰でも簡単に、ボタンを押せば焼ける機器を導入して職人レスを実現しました。提供までの時間は8分程度で、老舗店の半分以下です。これまで飲食業を経験したことがないからこそ、固定概念にとらわれずに工夫ができたのかもしれません。
集客はランチが6割、ディナーが3~4割といったところです。住宅街への出店が多いので、テイクアウトの需要も多いですね。戸建ての多いエリアでは、4人家族が4つテイクアウトしていただければ、それだけで約1万円の売上になります。競合店もありませんし、一度ご来店いただいたお客様は固定で通ってくださいます。開業以来、直営店とFC全店で毎月黒字を維持しています。
開業後1年で30店舗を達成
【Q】FC展開の流れについて教えてください。
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1号店オープンから半年後の23年2月にFC展開を開始し、9月で合計30店舗になります。加盟店の募集広告は一切出さず、公式HPや私のX(旧Twitter)、YouTubeなどのメディアを見て問い合わせが入ることがほとんどです。特にXでは日々の売上を投稿しているので、それをきっかけにお問い合わせいただく方もいます。FC店が開店すると、本部の店舗社員2名が1週間、OJTで研修に行きます。引き合いが多く、本部スタッフが回らないので出店を待っていただいている状態です。
オーナーは飲食未経験が7割、経験者3割。加盟金は150万円で一般的か少し安いくらいです。内装も1号店のようにDIYでかまいませんし、そもそも二等立地、三等立地なので、飲食のFCとしては破格の700万~800万程度で開店できるのも魅力だと思います。
加盟店への支援は惜しみません。売上が思ったより伸びない店舗があれば、オリジナルのチラシを作って定期的にその地域に配布したり、グルメインフルエンサーなどに案件を出し、TikTokやInstagram、Xで拡散したりするなど、店舗にあったマーケティングで集客を徹底的に支援します。結果的にFC開業以来、1店舗も赤字店がなく全店きちんと儲かっています。平和にフランチャイズを運営していく上で一番大事なのは利益ですから。
FC加盟店の満足度がお客様の満足度につながる
【Q】加盟店の支援が手厚いですね。
実はサラリーマン時代、清掃業の大手FC本部でスーパーバイザーをしていた際に、自分が担当した店舗のフランチャイズ離脱率を1割まで下げたのです。ただ一般的にはフランチャイズに加盟しても離脱される方が多く、「本部は何もしてくれない」というイメージを持たれています。
だからこそ独立した今、どうすれば離脱を減らせるのか、そのノウハウを今どんどん形にしています。たとえば誇大広告でFC募集をしても加盟させても、「聞いていた話と違う」となってしまいます。それなら広告を打たなければいい。あとは各店舗の売上が見えないという不安もあるでしょうから、Xで売上を日々公開してしまおうという考え方です。
【Q】FC加盟店の満足度を上げれば、お客様の満足度も上がるという考え方ですね。
こちらが加盟店の満足度を高めることに集中すれば、FCオーナー様はしっかりお客様向けのサービスをしていただけます。信頼関係が大切なのです。加盟店の満足度は、結果的にお客様の幸せにつながります。そのためにもまずは、こちらがギブ、ギブ、ギブで与えていきたい。当社ではここまでが本部、ここからは加盟店の仕事という明確な線引きはなく、純粋に店舗の成功というゴールに向かって走っているイメージです。結果的にオーナー同士が助け合ったり、情報交換したり、まるで運命共同体のように「一緒に頑張っていこう」という雰囲気ができています。
うなぎ業態で世界一を目指したい
【Q】今後の展望をお聞かせください。
まずは近い将来に100店舗を達成し、うなぎ業界で世界一のチェーンになろうと考えています。現在1位のうなぎ業態は日本国内で70店舗、海外を含め約100店舗なので、100店舗を超えれば名実ともに世界一になれるでしょう。それがまずビジネスとしての第一歩です。その看板を背負って、新しいことにもチャレンジしていきたいです。