ラーメン・つけ麺業態で、地域社会に根付く食を追求
【Q】世界的に新型コロナウイルスの影響がある中、9月にスロバキアに出店されていますね。
当社は「麺鮮醤油房 周月」を主力ブランドとしたらーめん、つけめん、油そばの業態を、国内では中国・四国エリアに8店舗、海外は香港や上海、タイのバンコクにも展開しています。ヨーロッパ初進出となるスロバキア店は海外6店舗目です(2020年10月現在)。
今や和食は世界的に注目されていますが、我々は一過性の流行に終わるのではなく、文化として地域社会に根付く食を追求しています。
どの国に行っても日本と同じ味であることを目指しながら、今後も欧州展開は視野に入れています。チェコのプラハ、オーストリアのウィーンなどを考えていますが、国内でも国外でも、やみくもに店舗を増やすつもりはありません。
当社は、「自分たちで作り上げたらーめん」をお客様に提供することを意識しており、我々の味に惹かれ、我々の理念に賛同してくれるパートナーとフランチャイズチェーン(FC)契約を結んでいます。FC運営は、「低コストで合理的に稼げる」を売りにする業態もありますが、当社はそういったご案内はしません。(取締役 統括本部長 稲葉修一氏 以下、稲葉氏)
【Q】「麺鮮醤油房 周月」の強みは何でしょうか?
愛媛・松山の本店「麺鮮醤油房 周平」の味を広めるために展開しているのが「周月」です。日本の自然の味を自然のままに引き出したいと思い、素材や調理工程を心掛けています。スープに使う醤油は、保存料なし自社天然醸造に取り組む愛媛県大洲市の梶田商店醤油醸造元の生揚げ(きあげ)醤油を使い、いりこは瀬戸内産です。麺は、各店舗で毎日製麺しています。それは、こだわりというよりむしろ、美味しさを追求するために当たり前のことです。
もちろん企業として利益はあげていく必要がありますが、売上至上主義でFC展開しては、我々もパートナーもいつか疲弊してしまいます。長く経営していくには信頼関係を深めるほうが重要です。
海外1号店である香港のFCオーナーは、日本で食べた我々のつけ麺の味に惹かれて出店を決めてくださいました。そして、その香港店に感銘を受け、出店を即決されたのが今回のスロバキア店です。そんな1杯のつけ麺がつなぐご縁を、大事にしていきたいと思っています。(稲葉氏)
TOKYO PRO Market市場初のラーメン店として上場
【Q】御社は2018年に株式上場も達成されていますね。
東京証券取引所傘下のプロ向け市場、TOKYO PRO Market(TPM)に、同市場初のらーめん店として上場しました。上場企業であるという信頼性は、海外展開する上でもひとつの強みとなっています。
関係者の皆様からサポートを受けて、上場申請の準備をはじめ、2年という短期間で株式公開することができました。ただその間は、山のような書類や資料の処理に追われていました。
食材をWebで発注できるシステム『BtoBプラットフォーム 受発注』を知ったのは、まさにそのタイミングです。発注業務自体は現場に任せているので、取締役の私自身には直接関係ありません。しかし現場の負担を減らし効率化できると感じたので、すぐに導入を決めました。
現在は愛媛・松山で営業する3店舗に導入しており、結果として、ペーパーレス化が進み、紙で保管しなければならない管理物を圧倒的に減らすことができています。これは大きなメリットです。飲食店は毎日食材が届くため、店舗ごとに大量の納品書が発生します。請求書や領収書といった紙ベースの書類もどんどん増えます。本社の保管スペースは限られているのに、このまま書類が溜まり続けたら、倉庫を借りる必要もあったでしょう。会社が紙に押しつぶされる心配がなくなったのはありがたいですね。(稲葉氏)
【Q】現場の業務負担の軽減や効率化にもつながりましたか?
導入前に比べて店長業務は軽減されています。FAXでの発注はイレギュラーに弱く、エラーが発生すると、休日や早朝など、自宅にいてもわざわざ店舗まで出向いて対応しなければなりませんでした。今は自宅からスマートフォンで処理できます。現場では『BtoBプラットフォーム 受発注』を使うのが当たり前になっていますね。
仕入れ先も、習慣で納品書を置いていかれることもありましたが次第にご理解いただいて、お互いにペーパーレス化が進みました。昔は紙しか手段がなかったからツールとして利用していたわけで、デジタル化された今の時代となっては、不要な紙は減らすべきだと実感します。(稲葉氏)
本部が支払の処理をするためには、各店舗は仕入れ先から受け取った請求書をもとに振込依頼書を作成する必要がありました。『BtoBプラットフォーム 受発注』は、画面上で確実な金額を確認できるので、本部としても集計処理が早まっています。月次決算の早期化で、経営戦略を立てる際に必要な精度の高い数字を出せています。
また、これまで各店舗とも棚卸はエクセルを使って時間と労力をかけて管理していましたが、システム化で早く確実に実施できるようになっています。(経理部 村上史恵氏)
労働環境の是正で、働き手が集まる業界に
【Q】今後の展望をおきかせください。
飲食業の労働条件はこれまで、長時間労働で低賃金という負のイメージで捉えられてきました。他の飲食店でも同じだからこんなものだろうという固定観念は捨て、おかしいと思ったらどんどん変えていかないと、働き手が集まらない、続かない業界になってしまいます。
当社は、全店舗ではありませんが、今後、営業は4時間で開店前の仕込みと閉店後の片付けに1時間ずつの合計6時間労働で終わる仕組みづくりに取り組んでいきたいと思っています。システムを活用してバックヤードの業務を効率化すれば、可能性は十分にあります。それ以上稼ぎたい場合は副業するとか、家族と一緒の時間を過ごすために夫婦で店舗運営するとか、FCでも自由な働き方を実現させていきたいんです。
結局、飲食店は人です。マニュアルどおり、レシピどおりだとしても、やる気のあるなしで料理やサービスはまったく違いますし、それによって売上も変わります。働き方改革も叫ばれ、新型コロナウイルスの影響でますます生き方は変わっていきます。極端にいえば、土日を休みにする飲食店があってもいい。それでも支持されるような味づくりを追求するでしょう。
飲食に携わる人が自由な働き方で生きていける、しっかり利益がとれる仕組みづくりを強化していくためにも、いいシステムがあれば今後も導入したいです。そして、我々と思いを同じくするパートナーと、食を通じて地域や社会へ貢献していければと思い描いています。(稲葉氏)
アザース株式会社
本社所在地:愛媛県松山市松前町2丁目6-11
代表取締役 中川 周平
公式ウェブサイト:https://www.az-earth.com/