来店する顧客のライフステージに合わせた業態展開
グループの1店舗目、『炉端焼き一歩一歩』がオープンした2007年ごろの北千住の駅前エリアには、飲食店といえる業態はほとんどなかったという。
小さなスナックが数軒ある程度の、平均客単価2000円だったエリアで原材料と味にこだわった店舗を出店。客単価を4000円まで上げながら、評判が評判を呼び、駅近くでのドミナント展開に至った。9店舗が集中しているが、業態が違うこともあり、それぞれの店の売上を食い合うことはない。1日の中でグループ店舗をハシゴする利用客も珍しくないという。
2019年5月にオープンした新店舗、寿司店『かいだんのうえ』は客単価6000円ながら早くも予約のとれない店となっている。グループがこれほど北千住に根付いているのはなぜか。
「まず、一歩一歩の従業員は、料理ができて当然です」と語るのは、総料理長の萩野谷氏。
美味しさの提供を大前提とした上で、研修や指導はサービスに関することがほとんどだという。気くばりは営業中の接客だけに留まらない。徹底して地域に向き合う、人としての姿勢を第一にしている。
「飲食店はサービスが9割です。美味しいだけでなく、いかにお客様に感動していただけるかを追及しています。挨拶ひとつとっても、笑顔でできているかを大事にしますし、店の前は気がついたら掃除をするよう心がけています。
また、通勤中も地域に根ざした店の一員であることを意識し、だらしなく歩かないようにと伝えています。お客様は地元の方ですから、従業員がサングラスをしたり、イヤホンで音楽を聴いていたりする姿は好ましくありません。この人が働いている店ならまた行きたい。と思っていただけるような行動指針を、全員で共有しているんです」
地域とのつながりを重視する考えは、店づくりにも発揮されている。展開する9店舗すべて違う業態なのは、利用客のライフスタイルにあわせているからだ。
同じ寿司業態でも“家族で安心して使える、街のお寿司屋さん”を目指した『にぎりの一歩』に対し、『かいだんのうえ』はプライベート感のある落ち着いた空間。低めに設計されたカウンターは、板前の調理風景がよく見える。板前と顧客が近い目線で密にコミュニケーションがとれる工夫だ。そのため、カウンター中心の本格的なつくりでも、敷居は決して高くない。