集客の要は、原価率100%の看板メニュー
2019年の消費税増税も控え、消費者の低価格志向は依然として続いている。外食産業も苦境に立たされているが、そんな中にあって、将泰庵は気鋭の高級焼肉業態として順調に店舗数を増やしている。扱うのはA5ランク黒毛和牛の雌牛だ。20歳の頃から焼肉一筋に歩んできたという代表取締役の木原徹氏は、店を持つ以上は食材にこだわりたいと考えていたという。
「私もそうですが、やはり料理人は、良い食材を使いたいという気持ちが絶対にあります。現場に立ってもらう料理人のためにも食材の質にはこだわりがありました。とはいえ、採算を度外視しては、経営は成り立ちません。
たとえば、希少部位を使った『幻の花咲タン塩』は原価100%でお出しして、お客様にお値打ち感を味わっていただいています。
その分のコストを吸収するためにメニュー構成を考えて原価のバランスをとっており、売上全体の原価率は40%くらいになります。焼肉業態としては決して高い数字ではありません」
原価率を意識しながらも、メニューに一工夫することで顧客に大きな満足を感じてもらえる。そのひとつが、将泰庵の名物『飲めるハンバーグ』だ。
「ハンバーグをいかに売るかは焼肉店の究極の課題です。材料が端材なので、売れば全体の原価を下げられます。しかしそれは店側の都合です。お客様に喜んでいただくためには、食べたくなるような価値のあるハンバーグが必要です。ですから普通ではありえない、これまで見たことがないものをと考えました」
ハンバーグは粗挽きにして肉の食感を残すのが一般的だ。だが将泰庵の場合は最も細かい目で2度挽きし、ふんわりとろとろに成形している。
「常識とは逆の発想です。ハンバーグ工場さんからも『こんなハンバーグは作ったことない』と言われました。でも他社と同じものを作る必要はないんだから、いいんです。“飲める”というネーミングも受けて、すぐに看板メニューになりました」
他では味わえない名物ハンバーグは評判を得て、『飲めるハンバーグ』専門業態を2店舗展開した。創業以来5年で累計500万個以上が売れているという。
「原価をしっかりコントロールすることで、より良い食材が使えます。良いものを出すことでお客様も喜んで来てくださり、またより良い食材が使えるという相乗効果を得ています」