ところで昔から日本酒を注文する際の代表的な文句に「辛口をください」という言う人が多いが、そもそもなぜ辛口が好まれるのだろうか?
「実は”辛口“という概念自体が古いものです。昔の日本酒は、大量生産をするために糖分を添加し、甘くてベタベタしていました。そこで加糖していないお酒、いわゆる辛口が良いお酒だと言われていました。ですが、現在では製造法などが進化したため“辛口=良い酒”ということではないのです」
上記の説明のように、店主が酒に関する知識を教えてくれるのも人気の理由だ。店主は全員、「SSI認定 日本酒きき酒師」の資格を持っており、豊富な知識を有している。
日本酒専門店でありながら、店にはあえて日本酒に関するメニュー表を置かないのだという。これはお客とコミュニケーションをして飲みたい酒を決めていくという本格的なオーセンティックBARと同様のスタイルだからだ。これによってお酒の知識がなくても失敗することがなくなる。またお客の体調や気温に合わせて、アルコール度数や燗をおすすめするなど、様々なメリットがある。
世の中には、いわゆる人気の日本酒だけを揃える飲食店もあるが、飲み方や提供の仕方にまでこだわればそれだけでは足りないといえる。本当の意味で日本酒を扱うということは、正しい知識と一緒に提供することを意味する。
設備投資が少なく、省スペースで出店が可能
ビジネス面からみても八咫の戦略は参考になる。まずは店舗の平均坪数が6~7坪と狭い点だ。
「立ち飲みということもあり、あえて狭い場所を選んでいます。狭いとお客様同士が近くなり、仲良くなります。さらに重要なのが、店の隅々まで店長が見渡せ、店の人間がひとりいればワンオペレーションでまわすことができるということです」
フードもお酒との相性を吟味したおつまみが10品目ほどあるが、どれも1分程度で完成できるように、調理などで火を使わない、切って、盛り付けるだけで提供できるように工夫されている。