「高回転率を維持するためのひとつが、調理時間の短縮です。同じ魚でも、焼き物なら約10分、揚げ物でも約5分の調理が必要です。この時間を縮められれば、お客様を待たせる時間も減らせますし、回転率の向上にも繋がります」
同店ではドミナント経営を行っているため、仕込みについては近隣の系列店で、丸のまま仕入れた魚の捌きから、冊(サク)切り分けまでを行っている。『海街丼』の店舗では、さらに細かく魚を切ることと、盛り付けだけに絞ることで、極力現場の調理の手間を省いている。
高回転率維持のための工夫はそれだけではない。スタッフは常時2名体制、ひとりが調理担当、もうひとりが接客や清掃担当と、役割分担も徹底している。またおつりのやり取りを減らすため、小さい店舗ながら、食券販売機も導入して効率化に力をいれている。
お客の平均滞在時間は20分~30分。平日ランチタイムだけで平均で2.5回転、多い時で約4回転もするという。また、1日を通しての平均回転率は約8回転で、坪単価の売上は月80~90万円にものぼっている。
1杯で3通り楽しめる。何度食べても飽きさせない工夫
海街丼では、3通りの食べ方を推奨している。
「はじめは白飯ベースの海鮮丼に、特製醤油をたっぷりとかけて食べることをお勧めしています。これは私の実家である、千葉県・銚子の地元ごはんをヒントにしています。私の地元では、刺し身を白米のおかずとして食べているので、まずは魚を白飯で食べる美味しさを知っていただき、その次に酢飯で食べていただきたいですね」
酢飯に関して、同社ではあえて白飯と酢飯の選択制ではなく、オリジナルのすし酢ジュレを開発し、海鮮丼に無料で添えて提供している。
「店内に白飯と酢飯を分けておくスペースがなかったというのもありますが、それ以上に、お客様が食べたい分だけ混ぜ合わせ、酢飯にできるので喜ばれています。また、店側も作り置きが不要になった分、食材のロスを減らせているのが大きなメリットです。
そして丼の締めは、熱々の「魚介出汁」をかけて、お茶漬け感覚で食べていただきます。出 汁の熱で、具材の食感が変化するので、最後まで飽きずに食べていただけます。ちなみに有料トッピングですが、私は出汁に生卵を溶き入れて、かきたまの様にして食べるのが好きです(笑)」
人それぞれで食べ方や好みが違う。同店では魚の具材を増やせる「ましまし」や、生卵、薬味など、トッピングも豊富に用意している。店側にとっての単価アップはもちろんのこと、自分流のカスタマイズに対応していることも、同店が人気になった理由のひとつだ。
旬を見極め、美味しくて安い魚を仕入れてコストダウン
普通の居酒屋では客寄せのため、あえて原価率の高い『目玉商品』を用意して来店数を増やすことができる。しかしそれはアルコールなど、ある程度利幅の高い商品があることが前提だ。