肉に合う日本酒を見つけるために、訪れた300の酒蔵
建築士やプロボクサーなど様々な経歴を持つ森田氏。飲食業を始めるきっかけは、ボクサー時代にお世話になっていたジムの会長への恩返しだという。ジムの後輩に旨い肉を思い切り食べて欲しい、という理由から業態は焼肉に決めた。
しかし、飲食に関してはまったくの素人。そんな森田氏がまず始めたのは、物件選びだった。
「店舗の立地選びは、オープン前に出来るたったひとつのサービスだと思います。駅近で雨でも濡れないというのは、最高のサービスですからね。あとは、従業員を雇わなくていい立ち飲みスタイルにしようと決めて、今の物件を選びました」
家賃は2.2坪で月21万円、坪10万円という計算だ。「今だったら絶対に借りないほど高い」と森田氏は言うが、それでもこの立地に大きな意味を見出していた。
「神田駅は1日の乗降客数が約15万人。駅から少し離れれば、同じ価格帯で10倍の広さの物件が借りられるのもわかっていました。でもそれでは意味が無い。駅から徒歩30秒の立地で、その15万人全員をターゲットにしようと思ったわけです」
とはいえ、2.2坪の店というのは極端に狭く、出来ることは限られていた。焼肉に合うビールのサーバー、ハイボールやホッピーに必要な製氷機も置けなかった。それどころかホッピーの瓶を置くスペースすらなかったのだ。そこで目をつけたのが、蓋を開けて注ぐだけでいい日本酒だった。
「肉に合う酒を見つけるために、とにかく酒蔵を訪ね歩きました。店をオープンしてからも続け、300蔵は回りましたね。必ずしも単体で飲んだ時に美味しい日本酒が肉に合うわけではないので、苦労しました。試しながら肉に合うものだけを選んでいるので、うちで出す日本酒は他のお店とはラインナップが違うと思いますよ」