“バル”文化を名古屋に根付かせたい
秋山さんは18歳の頃から飲食業に携わり、30歳を機に飲食店の事業を開始した。経営者として10年間で80店舗を立ち上げる。しかし、順風満帆な毎日を送る中で、ふと疑問に思うことがあったという。
「10年ほど“現場”から離れて新業態の店舗を考えたり、会社のシステムを作ったりすることに専念していました。しかし改めて、お客様の気持ちをもっと理解するためには、自らが“現場”にいることが大切ではないか。と思い始めたのです。」
40歳。これが最後のチャンスと思い、会社を退任して、自ら現場に戻る決心をした秋山さん。満を持して新会社を始めるには、売上だけを追い求めるのではなく“自分がお客だったら行きたい店”を中心に考えたという。海外に行く機会が多かった秋山さんは、スペイン語圏や南ヨーロッパで盛んな “バル”文化に注目した。
「小さなスペースで、ワイワイ楽しく喋って、立ちながらワインを酌み交わし、安価なつまみを食べる。そんな文化を店に取り入れたいと思いました。当時は、『名古屋は車社会なので、立ち呑みやバルは難しい』と言われていました。でも、誰もやっていないからこそ自分で作ろうと思ったのです」
秋山さんが立ち上げた「カドマル」の前身に当たる「イタリア食堂MARU」は、オープンしてすぐに評判の店になった。多くの人に支持され、その後も縁あって物件を次々に紹介され、バル業態を拡大していく。その中のひとつが、とある小さな物件だった。