「カドマルにはスペースの問題で調理器具が入れられなかったので、食事の提供は初めから考えませんでした。その代わり1号店のMARUを含む既存の3店舗から出前という形にしたのです。幸いどの店もカドマルから目と鼻の先の距離にあるので、頼めば熱いうちに届きますし、何より全店舗200以上のメニューから好きなモノを選べるのもウリです」

シャンパンを安価で提供している分、どんなに客席の回転率を上げたとしても、売り上げには限界があっただろう。しかし、秋山さんはそれを逆手にとった。フードメニューを中途半端に揃えず、ドミナント展開している近隣の店舗から調達することでシャンパンの提供に専念したのだ。確かにこれなら、店舗の小ささもハンデにならないし、系列店の売上にも繋がる。

常に“自分がお客さんだったら行きたい店”という原点を忘れず、お客様第一主義で“現場”を大切にする秋山さん。高級なイメージが強いシャンパンを、カドマルはグッと身近なものにさせた。夕刻になると、店はあっという間に一杯になった。テーブルにあふれる笑顔は、秋山さんが思い描いた“バル”の姿そのものだ。